フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(C)フジテレビ
フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(C)フジテレビ

17日に放送されたフジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(主演窪田正孝)最終回が、全話最高視聴率13・8%で有終の美を飾った。枠コンセプトだったラブストーリー路線を“凍結”してから4作連続の平均2ケタ超えとなり、月9完全復活といえそうだ。一方で、恋愛ドラマ枠としてのプライドは今もあり、石原隆取締役は「放棄したわけではなく、今は模索中」と話している。

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16年1月期の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で平均視聴率が1ケタに転落して以来、新作をかけるたびに何かしらのワースト記録を更新し続けてきた月9。18年1月期「海月姫」で平均ワーストの6・1%を記録したのを最後に、ラブストーリー路線に一端区切りをつけた。その第1弾である詐欺師ドラマ「コンフィデンスマンJP」(18年4月期)が高い完成度で枠の評価を押し上げ、続く「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(同7月期)で平均2ケタ復帰(10・6%)を果たしている。

そこからは、ドラマ界の3大お仕事である「警察」「弁護士」「医療」を固め打ち。内容も、過去の人気シリーズの掘り起こしや海外ドラマの日本版など、なりふり構わぬラインアップで取り組んできた。全話平均は「絶対零度」10・6%、「SUITS/スーツ」10・8%、「トレース~科捜研の男~」10・6%、「ラジハ」12・1%。4作連続の平均2ケタを実現している。ラジハは今期の新作ドラマ1位がほぼ確定という健闘ぶりだ。

石原氏は「月9はフジテレビの番組のフラッグシップ。ここが元気がないとフジテレビ全体に元気がないという印象になる」と語り、月9快調に表情も明るい。

「コンフィデンスマン」の企画あたりから、「今後月9はどういう番組を掲げていくか」を一から検討し、組織的にも人員配置的にも改革を行ってきた。「その改革が実を結んでいる実感はある」。改革は文字通りの“何でもあり”だった。「月9は恋愛、という今までの常識にとらわれないところから。他局で当たっているものも参考にさせていただきながら、学びもした」と率直だ。

フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(C)フジテレビ
フジテレビ月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(C)フジテレビ

今は配信や録画視聴、個人視聴率などさまざまな指標で評価を得られるとはいえ、「民衆の敵」最終話4・6%、「海月姫」7話4・9%など、目を疑う数字が連発されれば、制作現場が萎縮するのは当然のこと。枠が低迷すれば、人気俳優が出てくれなくなるという悪循環にも見舞われる。「コード・ブルー」や「絶対零度」など過去シリーズのフォーマットから何かを学んだり、3大お仕事モノでまずは視聴率表の変化を実感したりというところから自信と制作力を取り戻していったのは、個人的にはまっとうな戦略だと思える。

石原氏自身、「世にも奇妙な物語」「古畑任三郎」などドラマの金看板をいくつも世に出した名物プロデューサー。良くも悪くも数字の力を熟知している。「番組がお店だとすれば、誰も通わなくなっちゃってるかもしれないという時期があった。料理を出しても誰も食べに来てくれないという状況なのだとしたら残念なこと。まずはもう1回お客さんにお店に来てもらい、その次に『おいしい』と言ってもらえたらいいなと」。

ところで、月9はもう“脱ラブストーリー”と受け止めていいのだろうか。ここ数年、異色作が登場するたびに定例会見でもよく話題になるが、局として正式に脱ラブストーリーを明言したことは1度もない。

石原氏は「はい。言っていません」。現状について「昔のような“全面的に恋”みたいなのはまだ難しく感じていて、今は模索している最中」。お仕事モノの中に恋愛のエッセンスがあるラジハのような見せ方も工夫のひとつだ。「そこのバランスを現場も模索しており、私も現場にお願いしています」という。

ラジハは私も毎週夢中で見たので、終わってしまってちょっとショック。24日には特別編も放送されるというので期待したい。ちなみに、7月期の月9も医療モノ。上野樹里さんが法医学者を演じる「監察医 朝顔」です。

※視聴率はビデオリサーチ調べ(関東地区)。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)