歌舞伎俳優の片岡愛之助(45)の妻の藤原紀香(45)をかばう姿は、すがすがしくりりしかった。先日行われた愛之助の初主演ミュージカル「コメディ・トゥナイト!ローマで起こったおかしな出来事〈江戸版〉」の取材会。歌舞伎担当ではないこともあり、彼の話をじっくりと聞くのは、この日が初めてだった。

 まず、作品についての質疑応答では、ユーモアを交えて軽快に答えていた。常に具体的なエピソードを出して話すので、中身が詰まっていて、自然とそのトークに引き込まれていった。「話術にたけた人だな」という印象を持った。

 話が盛り上がってくると、記者たちも、より突っ込んだ話題を投げかける。当然、後半になってくると妻紀香についての質問が、連発された。同公演は、4月は約1カ月間、大阪松竹座で上演される。記者側からは「紀香さんは大阪に滞在するのか?」という質問が飛んだ。

 そもそも、歌舞伎ではないミュージカル舞台で、妻が役者の夫の地方公演に同伴しなければならない慣例などない。ましてや、紀香は舞台などもある忙しい女優だ。ちょっと意地悪な意味が込められてることには、その場にいたみながすぐに感づいた。

 それでも愛之助は、表情も崩さず「彼女に仕事がないときは、ずっと大阪でも一緒にいますよ。健康面をサポートするために、手料理を作ってくれますから」と、サラリと返答した。そして「そもそも、歌舞伎俳優の妻も、毎日劇場にいなくてもいいんですよ。実際に毎日いる奥さんは、いませんから(笑い)。初日と中日と千秋楽だけでいいんです」と続けた。

 中村芝翫の妻の三田寛子を例に挙げて「最近、寛子姉さんがたくさんテレビに出るようになってきたから、(妻紀香への批判も)言われなくなったけど(苦笑い)」。坂田藤十郎の妻で、国会議員でもあった扇千景のことも出して「誰も何も言わなかったでしょ(なぜわが妻の紀香だけ?)」とけん制した。ただ、とても柔和な笑顔で話すので、マスコミへの敵意は全く感じさせず、気まずい空気にはさせなかった。とにかく妻を守りたい、現実を理解してもらいたいという気持ちだけが、伝わってきた。

 紀香は、愛之助から心から愛されているなと分かる瞬間だった。人生の折り返し地点ともいえる40代半ばでの結婚。若さや勢いだけで決められる年齢ではない。お互いに長くいたわり合えるかを、本気で考えて確認しないとできなかったはずだ。少なくとも、この取材だけでも、地に足がついていることは、よく分かった。