大竹まこと(68)が、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」(平日午後1時)の放送10年を記念して、ニッカンスポーツ・コムの取材に応じた企画の第3回は、大竹と医師で作家の鎌田實氏(69)との対談の模様を伝える。同局の「鎌田實×村上信夫 日曜はがんばらない」(日曜午前10時)に大竹が初出演。同世代の2人が若者に「負けて強くなれ」とのメッセージを送った。

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 大竹が放った直言が、最近ネット上で議論を巻き起こした。6月下旬、民放局で、将棋の連勝記録歴代1位の29連勝を達成した藤井聡太四段(14)について「誰か止めろよ」と発言した一部分が切り取られ、ネットニュースとして配信され“炎上”した。

 大竹は、鎌田氏との対談の冒頭でこの件について触れた。

 -鎌田さんと大竹さんの番組で共通しているのは、生き方について語ること。若者が夢を持ちにくい、生きにくいとされる時代で、若い人に伝えたいことはありますか

 鎌田 世の中に怖いものは、それほどない。もっと自由に生きていいんじゃないかな? 若い人が元気でいれば、日本はもっと面白くいい国になると思う。

 大竹 誰だって失敗しないように生きたいさ。でも、1番大事なのが失敗だと思う。先日、テレビとラジオで「藤井四段を誰か止めろ」と発言したことがあった。俺は藤井四段が嫌いではないし、勝ってほしいと思っている。でも29連勝した時、誰かが止めた方がいいと正直に思った。若い人たちは本当に失敗するの嫌でしょ? 触る前からヤカンが熱いのが分かっているから触らない。それじゃあ挫折しない。

 鎌田 加藤一二三さんも勝率は6割。一生勝ち続ける人はいない。どういう負け方をしているかが大事。

 大竹 負けなきゃ分からないことがたくさんある。恋愛もそう。俺なんか何度ふられたことか。失敗すること、負けることを怖がっていたら、何も得られないまま大人になってしまう。

 鎌田 大竹さんは、怒りの人だね。でも本当はとても温かい、やさしい。ところで、いつから、お笑いで食えるようになったと思った?

 大竹 俺たちの商売は、その保証がない。食えないのが当たり前の世界だから。ただ、世間で、たまに「コメンテーター」とか言われると本当に勘弁してください、そんなふうに思って、生きてきたわけじゃありませんと。目の前の仕事が少なくなった時に「TVタックル」があった。出ていたら政治の話になっていって、何かしゃべっておけば生き延びられると思ってしゃべっていただけの話。

 鎌田 レッテルは、人が勝手に張るもの。あまり恐れる必要はないよね。

 大竹 レッテルを貼る人は一部分しか見えていないから張るわけだけど、逆に得したなと思えばいい。大竹まことは、常に怒っている人だというレッテルを貼られるけど結構、優しいよ。「この人は俺のこと怖いと思っているんだ。怖いというレッテルで俺を見ているんだから、その期待に応えなきゃな」ということで、この野郎と怒る(笑い)。

 鎌田 みんながいい顔をし過ぎて、日本全体があいまいになっている中、怒るオッサンは必要だよね。

 大竹 近ごろの年寄りを見ていると、若い人に気を使っているからね。何で若いヤツのご機嫌なんか取らなきゃいけないのかなと思って。若いヤツは「あいつ嫌だな」と思った時に自分の場所を探すんだから。そいつが好き放題やるのを受け入れていたら、そいつが次の場所を探さないでしょ。

 -大竹さんは「人の数だけ物語がある。ザ・ゴールデンヒストリー朗読CDブック」、鎌田さんは「カマタノコトバ」を書いた。ともに言葉、人の生き方をテーマにした著書。お互いの持つ言葉の魅力は

 鎌田 大竹さんは大事な真意みたいなものを、外さないでピシッと話す。僕も勇気を持って言うべきことは言わなきゃいけないと思っているんだけど。大竹さんのポジションって結構、微妙なはずなのに、ずっとこういう業界で、言いたいことを言って生き続けているのは、やっぱりこういう人が必要だということ。そこに、大竹まことのすごさがあるような気がしますね。

 大竹 俺は捨てるものがない。「お前、クビ」と言われたら「はい」って言えるところにいようと思っているから、言いたいことはなるべく言わせてもらう。誰かの後ろ盾とか何もない。常に1人だから、自分ではそういうふうにして、潔くいようかなぁくらいは思っているんだよ。

 自由に生き、率直に語れば、どこかで壁にぶつかる。そこを乗り越えれば人間は、また1つ成長できる。そうして生きてきた2人だからこそ、その言葉には豊かに生きるヒントが詰まっている。【取材=村上幸将、山内崇章】(おわり)

 ◆大竹(おおたけ)まこと 1949年(昭24)5月22日、東京都生まれ。東京大学教育学部付属高校卒。77年に、きたろう、斉木しげるの3人でシティボーイズ結成。単独でもバラエティーやドラマなどに出演。レギュラー番組はテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」など。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」(月~金曜午後1時)は、5月で丸10年を越えた。7月発表の聴取率は同時間帯トップ。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。04年からイラク支援を始め、難民キャンプ診察も続ける。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。近著に「カマタノコトバ」(悟空出版)。