舘は定年後の人生を模索する男を演じており、同作を「あぶ刑事」シリーズ完結後の再挑戦と位置付けている。「作品になった時、自己満足で終わらないようにしたい。まだまだイケるなと思う瞬間はないけど、終わったなと思う瞬間もない」と、気を引き締めると同時に余裕も見せた。

 この日は、舘、黒木、広末、親戚役の田口トモロヲ、夫婦の娘役の臼田あさ美のメイン5人がそろう最初で唯一の撮影日。家族がいる中に恋の相手が訪ねてきて冷静を装う夫、微妙な表情で見守る妻、うろたえる女性。それぞれ一瞬で複雑な感情がうずまく難しい場面だったが、黒木も「笑いの絶えない現場です」と撮影に臨んでいた。【小林千穂】

 ◆「終わった人」 大手銀行から子会社に転籍し定年を迎えた壮介(舘)。ジムで体を鍛えたり図書館に通うが、満たされない。美容師の妻千草(黒木)は、後ろ向きな壮介と距離を置き始め、夫に恋を勧めるほどに。文学を学ぼうと入ったカルチャースクールで、久里(広末)と出会う。笹野高史、渡辺哲、ベンガル、高畑淳子、温水洋一、清水ミチコも出演。内館牧子氏原作。