映画製作にこだわり、映画を愛する俳優が集まった芸能事務所ディケイドが、設立25年を記念し、所属俳優を集結させて、映画「AMY SAID エイミー セッド」(村本大志監督)を製作、公開した。映画研究会で映画を作り続けた日々を諦めた社会人を描いた、大人の青春映画に出演した三浦誠己(41)と渋川清彦(43)、企画製作の佐伯真吾代表取締役が、ニッカンスポーツコムの取材に応じ、「AMY-」製作の裏側を語った。

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 「AMY-」は、かつて映画研究会でともに映画を作っていた9人が、中心的存在ながら突然、自殺したエミ(柿木アミナ)の20年目の命日にバーで再会し、語り合う物語。三浦は監督として才能を嘱望されながら、夢破れ、今はパン屋をしている朝田、渋川は無農薬野菜の生産農家の飯田を演じた。飯田の妻直子(中村優子)が突然「わたし本当は知ってるの、エミが死んだ理由。ずっとみんなに言いたかった」と、朝田も思いを寄せていたエミの過去を語り始めた途端、メンバーは動揺し、止まっていた時が動きだす物語だ。

 -映画作りを諦めた人を描いた。厳しい業界にもメッセージを投げかける作品

 三浦 特に力が入ったとか、特別なことをしようという意識はなかったと思います。自分たちの身近な題材だったし、脚本段階で当て書きに近いような脚本をいただいたので、やりやすかったり、勝手知った仲間と作ることで、生まれるものはあったと思います。

 「AMY-」は、佐伯氏が村本監督とともに、ある原作の実写化に動いたものの成就せず、自らの体験談をまとめたものを同監督に渡し、監督が2週間でプロット(あらすじ)を書き上げた。脚本を書く際には、ディケイドの俳優を元に当て書きしてキャラクターを作った。そのため台本が早く出来ていたこと、俳優の多くがディケイド所属のため、スケジュールの調整がしやすく、本の読み合わせも早い段階から行うことが出来た。映画よりも、舞台の稽古に近いくらいの準備が出来たという。

 渋川 (撮影も)みんな一緒によーい、スタート! だったので、緊張はもちろんしますけど何かリラックスして出来たというか。前々から、いつも思っているのが…俺って、映画の中で1、2シーンの出演で、というのが多かったりするんですよ。何人かが出来上がったチームの中にポンッと入っていくと、やっぱり変に緊張するんですよね。それが、すごく嫌…まぁ、そういうもんだから、しょうがないなと思っているんですけど、今回はみんな一斉に出来たのでリラックスして出来ましたね。前々からリハーサルもやっていたので。

 三浦 通常より早く台本をいただけたし、本読みも出来た。前から知っている仲間だったりするし、おのおのが特別なことをしようとは思っていないけども、準備期間が特別だったかも知れないですね。そこで生まれているものが、たくさんある。最初の本読みが3カ月前で、次が1カ月後、2週間後…とか言われると、みんな、さすがにセリフを覚えなきゃと(苦笑い)2回目の本読みの時に本を持ったまま読むのと、話して読むのとでは違う。みんなライバル心があった。

 渋川 そういうのはあるね。自分は、セリフは現場で入れていけば、いいやと思っていましたけどね(笑い)みんなで、いっせーのせ! で撮影をスタートしたり、順番で撮る順撮りも(他作品の撮影では)ほぼない。主役の人でもないんじゃないですかね? 群像劇で全員一緒に始まるかどうかは、いろいろな人のスケジュールもあるから、なかなか出来ないけれど、これは本当にみんな一緒くらいの感じで出来た。あの人、現場でスケジュール無理だから…みたいなウソ、きかないですもんね(笑い)

 三浦 本読みも、断れない。本読みを何回もする現場も、たまにあるんですけど…これも5回やりましたけど、ちょっとウソ言って行きたくねぇ…とか、ウソがきかない(苦笑い)

 渋川 自分らのスケジュール、知っていますし、把握されているし(苦笑い)

 -バーのテーブルで9人が、時に立ち上がって心情を吐露する場面は、1シチュエーションものの舞台を見ているようだ。

 佐伯氏 監督には、芝居を作るようなアプローチで映画を作りたいという思いがあって。芝居で見せるものを撮りたい…オンの芝居を見せてくれと。メロディアスな芝居というか、一歩引いたところから芝居をするのではなく(気持ちを)前に出すお芝居をしてほしいと。稽古も、舞台みたいにはいっぱい出来ませんでしたけど何日か、数時間でもやって、来ることが出来る人は来てくださいというところから始めましたね。

 三浦 ヤマ場と言ったらおかしいですけど、おのおのに告白、吐露する要素があって。1人1人が今日は誰の日、明日は誰が長ぜりふがある(と把握している)というのがあったから、ここでやらないと出ている意味がないというか、この中に紛れちゃう…という危機感が、みんな、あったかも知れないですね。

 -ヤクザの若頭や威勢のいい男の役が多いが、今回は陰鬱(いんうつ)とも言えるおとなしい役どころ

 三浦 セリフがあまりなくて最後に告白する役柄だったので、どういう芝居をしようか考えていたんですけど「何だよ、あいつスカしやがって」と思われていたと思います。(渋川は)あそこだけ、気合入っていたんですよ。それ以外、もう脱力状態。ここだけ、ちゃんとしようみたいな。目の色が違ったから、あぁ、ここでキッチリバットを振ってくるなと(苦笑い)

 渋川 長ぜりふっていたら、やっぱり…ね(笑い)

 次回は三浦と渋川が、映画に出る俳優の立場から映画、業界の今を語る。【村上幸将】