原一男監督(72)の最新ドキュメンタリー映画「ニッポン国VS泉南石綿村」の初日舞台あいさつが10日、都内で行われた。

 大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)被害者や遺族らが、規制や対策を怠ったとして国に賠償を求めた「泉南アスベスト訴訟」をテーマにしたドキュメンタリー作品。舞台あいさつには、同映画に出演した原告団の赤松タエさんと佐藤美代子さん、泉南アスベストの会の柚岡一禎さんも登壇した。

 「泉南アスベスト訴訟」は、14年に最高裁が原告勝訴の判決を出したが、71年以降に就労した作業者などは救済の対象とされなかった。アスベスト工場で働いていた佐藤さんの夫も救済対象外となった。佐藤さんは「なんで線引きされるのか。32年もびっちり仕事して。納得できんかった」と胸中を語った。映画には闘病中の夫も収められている。抵抗はあったが「代表として裁判で戦っていくには、口で言うよりも動く映像で、そこまでしなければ国には勝てんと思うようになった。私にしたら(夫の)苦しい姿が私の宝物」と涙を流した。原監督は「1番つらいところをさらけ出してくれるのは勇気がいる。佐藤さんほど覚悟のある人はいなかった」と感謝を伝えた。

 最後に、原監督は「映画で描かれた泉南の人たちは一息ついたような印象ですが、首都圏ではこれから判決が出るアスベスト裁判がある。その人たちの後押しをしてあげたい。もう1回運動の渦を作ることができたら」と呼び掛けた。