子どものころ、テレビ朝日系刑事ドラマ「西部警察」が好きだった。

 渡哲也演じる大門がショットガンをぶっ放し、転倒した車は大爆発! その影響か、車が転倒するような事故を起こしたら、漏れなく爆発するとさえ思っていたほどだった。そんな中でも好きだったのが、寺尾聰演じる松田猛だった。狙撃の名手だったと記憶しているが、ずっと疑問に思っていたことがあった。なぜ、役名が「松田猛」なのに愛称が「リキ」だったのか。

 その答えに、思わぬ場で遭遇した。4月11日放送開始のテレビ朝日系「特捜9(ナイン)」(水曜午後9時)記者会見の席上だった。同作で寺尾は、新班長。宗方朔太郎役で出演する。主役浅輪直樹を演じる井ノ原快彦の芸能界入りのきっかけが西部警察だったことも意外だったが、井ノ原が「リキが亡くなった時、仏壇に絵を飾ったほどファンだった」ということになんとなくシンパシーを感じた。その直後だった。井ノ原が「なんでリキなのかを聞いた」と話し、「えっ!?」と思った。もはや、興味はそちらに傾いていた。

 「俺と同じ年くらいの照明マンがいてね。そいつの息子の名前を借りていいかとて聞いて。台本上は『猛』だったけど、自分から『リキ』って呼んでくださいとお願いしたんだよ」

 長年の謎が解けた瞬間だった。その照明マンと何があったかまでは語らなかったが、推測するに深くいい話があるのだろう。そうでなければ、台本を変えてまで自分の役名に照明マンの息子さんの名前を使うことはないはずだ。いつかインタビューする機会があれば、その理由を聞いてみようと思う。寺尾聰という人間の心のひだに触れたような気がした瞬間となった。