6代目桂文枝(74)が03年の初任から歴代最長8期務めてきた上方落語協会の後継を決める次期会長選は26日、大阪市北区の天満天神繁昌亭で開かれ、笑福亭仁智(65)が最多得票を得て、次期会長候補に決まった。協会員総数は260人。5月末に行われる理事会・総会での承認を経て、7代目会長が誕生する。任期は2年の予定。

 文枝会長はここまで8期15年の任期中に、06年には戦後初の定席「天満天神繁昌亭」をオープンさせ、上方の悲願を達成。協会を公益社団法人とし、今夏には神戸に「喜楽館」を開館予定に持ち込むなど、上方の隆盛に尽力した。

 一方で、昨年末の不倫騒動をはじめ、近年2回にわたる女性問題が報じられるなどし、心労も重なっていた。その最中、今年3月下旬に開かれた協会の総会で、今期の会長選から退くことを正式に表明していた。

 次期会長候補に決まった仁智は71年、笑福亭仁鶴(81)の一番弟子として入門。現代的な創作落語に加え、古典も手がける実力派。当代きっての「爆笑派」としての力量とともに、後輩の面倒見も良く、年長者からの人望も厚い。

 選挙後、取材に応じた仁智は「今日は候補に決まっただけですので、あらためて正式にお話ししたい」と言いながらも、大役を前に「たいへんやと思いますよ。嫁もたいへんになるから、今からなんて言おうか…」と苦笑しながら話した。

 上方落語協会は57年に3代目林家染丸や、6代目笑福亭松鶴、桂米朝、3代目桂春団治、5代目桂文枝(いずれも故人)ら「四天王」が中心になり、結成。初代会長には3代目染丸が就き、18人で船出したが、いまや協会員は260人を数える。

 仁智は「文枝会長には長いこと、やっていただき、協会を大きくしていただいた。盤石に近い形にしてもらって、そこから大きく方向を変えることはない」とし、文枝路線を継承しつつ、さらなる発展に努める意向ものぞかせた。

 上方落語協会は初代会長の3代目染丸から、68年に6代目松鶴が2代目会長に就き、77年に3代目春団治、84年に3代目小文枝(後の5代目文枝)と会長職が継がれ、94年からの露の五郎を経て、03年に当代の6代文枝が就任。仁智は7代目会長に就く見通しだ。

 師匠の仁鶴には「今から報告に行きます」と言い、笑福亭一門にとっては、仁智からみれば大師匠にあたる6代目松鶴以来の会長職。仁智は「おそらく、師匠(仁鶴)にも、松鶴以来の笑福亭やな、と、そういうことは頭にあると思います」と話していた。