松竹新喜劇の藤山扇治郎(31)と元宝塚星組トップスターの北翔海莉が共演する舞台「蘭~緒方洪庵、浪華の事件帳」が5月16日から20日まで東京・新橋演舞場で上演される。

 「蘭」は大阪を舞台に、若き日の洪庵(扇治郎)と武術にたけた男装の麗人左近(北翔)との淡い恋を軸に描く娯楽時代劇。先日、都内にある幕末の蘭方医緒方洪庵の墓を2人でお参りしたが、扇治郎は「武道は全然できない、へなちょこでも、人の身も心も癒やす医者にならないといけない。やりがいのある役です」。歌を歌い、立ち回りにも挑む北翔は「もう男役をすることもなく、刀を持つこともなくなると思っていたんですが、今回は侍姿で立ち回りもできてうれしい。ただ、宝塚時代とは違って男性が相手。すごく迫力が増すと思うし、また一から覚えるつもりです」と謙虚に話した。

 松竹新喜劇と宝塚歌劇。関西を代表する2大劇団だが、一方は松竹系、他方は東宝系とあって、交流はほとんどない。今回は初共演となるが、実は北翔は大の新喜劇ファンだった。「宝塚にいながら、松竹新喜劇に通い詰めていた人なので、本職はミュージカルですけど、好きなのは松竹新喜劇なんです」と言うほど。

 松竹新喜劇が好きだからこそ、新喜劇の次代を担う扇治郎にも気を使っている。「本読みの時点で、この座長さん(扇治郎)なら、120%でついていけると思ったんです。私たち共演者は、この作品を藤山扇治郎さんの代表作にする役目があると思っています」。宝塚でトップスターになったのが入団18年目という遅咲きで、誰よりもスターとなる際の苦労を知る北翔だけに、祖父が藤山寛美、伯母は藤山直美と、新喜劇のスターとなる宿命を持つ扇治郎を応援したくなるのだろう。