宝塚歌劇の月組公演「エリザベート-愛と死の輪舞-」が24日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

96年の一路真輝・花總まりコンビによる初演から、宝塚10回目の上演。11年目の若きトップ珠城(たまき)りょうが10代目黄泉(よみ)の帝王トートにふんし、今作が退団公演となるトップ娘役愛希(まなき)れいかは、タイトルロールのエリザベート役。開幕後に取材に応じた演出家の小池修一郎氏も「パワフルな珠城トートに、直接向かい合う愛希(エリザベート)。初日から公演を重ね、成熟していくと思う」と期待を寄せた。

男役として恵まれた長身(172センチ)に加え、大きな手を効果的な演出のように扱った珠城は、黄泉の世界からは正反対のエネルギッシュさが持ち味。珠城本人は「静と動の対比で演じたい」と意識して臨んだ。

その「珠城トート」に、小池氏は「本人は健康的で体育会系の個性。人柄も明るくて温かくて朗らか。トートとは対局にある」と言いながらも、初日を迎えると、期待感は倍増した様子。「扮装(ふんそう)して板に乗ったときに、説得力を持ったトート像というのを出している。これからどんどん(進化して)いくんじゃないか」と語った。

珠城と相対して、凜(りん)と立っていたエリザベートの愛希には「技力と歌唱力の芯がある。軸がしっかりしている」と高評価。

一方で、男役から転向し、愛希は今作を最後に、6年7カ月にも渡り、在位したトップ娘役から退くことに「これが彼女の集大成。(エンディングの)昇天(場面)が、愛希自身の宝塚人生の最後というのにふさわしいのではないか。自分の思いがすべて投影されるんじゃないかと思うんです」とも思いやった。

皇帝フランツ・ヨーゼフは芸達者な美弥(みや)るりかがふんし、小池氏は「やはり、きめ細かく表現できる」と全幅の信頼を置く。狂言回し的な立ち位置の暗殺者ルキーニは、慎重に芝居に取り組む月城かなとが演じ、今後、新たな化学反応を起こしそうだ。

また、若手の出世役である皇太子ルドルフは、まだ新人学年の7年目ながら主力に成長している暁千星(あかつき・ちせい)と、5年目で進境著しい芝居巧者の風間柚乃(かざま・ゆの)が役代わりで臨む。

小池氏は両者にも「ひたむきな太陽の暁、屈折した演技力がおもしろい風間は月。太陽と月で変化が生まれるはず」と期待。若き月組には「フタを開けたらカラフルな物が入っているよう」と表現していた。

宝塚大劇場公演は10月1日まで。東京宝塚劇場は10月19日~11月18日。愛希は、東京公演千秋楽をもって退団する。