歯に衣(きぬ)着せぬドキュメンタリー映画で米国社会を斬り続けるマイケル・ムーア監督(64)の新作「華氏119」が2日、公開された。

ちょうど2年前、大統領選当日のニューヨーク・タイムズ紙が出した勝率は民主党のヒラリー・クリントン氏が85%、共和党のドナルド・トランプ氏が15%だった。なぜ、おおかたの予想を覆してトランプ大統領が誕生したのか、そしてトランプ政権はどこに向かおうとしてるのか、ムーア監督が独特のデータ分析と直撃取材でひもといて行く。

移民政策、国民皆保険、LGBTQ…提示される米国世論の調査データはいずれもリベラルな方向に傾いている。では、なぜ正反対の政策を推進する大統領が選ばれてしまったのか。

両陣営の選挙の進め方や選挙制度そのものにメスを入れたムーア監督の分析には説得力がある。

ムーア監督とトランプ氏が共演したアーカイブ映像も織り込まれ、笑わされるところも少なくない。が、そんな口直しをはさみながら、話はどんどん怖い方向に進んでいく。

トランプ大統領を生んだ原因はヒラリー氏はもちろん、オバマ前大統領にもあると断じ、妥協とぬるま湯に漬かった民主党にも容赦ない。ニュース映像の中からその確たる「証拠」を切り取って見せる。

そして、終盤にはナチス政権を生んだ当時のドイツと現在の米国の類似性。ヒトラーとトランプ氏自身のそれも浮き彫りにする。決して極論に思えないところが怖いのだ。

字幕監修は池上彰さんだからよどみが無く、分かりやすい。見て損のない1本だ。