ビートたけし(72)が、大みそかの「NHK紅白歌合戦」に歌手として初出場することが発表された。

お笑い芸人、映画監督として圧倒的な実績を残してきたたけしだが、歌手としても1980年代~90年代にかけ、名義は一部異なる曲があるものの、20枚近いシングルを出している。アルバムもベスト盤を含め15枚前後を発売。今回紅白で歌う予定の「浅草キッド」は、1986年発売の同名アルバムに収録された、自身が作詞作曲も手掛け、浅草での芸人修業時代を描いたたけしの代表曲でもある。

1980年ごろから漫才ブームが起き、たけしはビートきよしと組んだツービートとしてブレーク。その勢いもあって、81年1月には伝説的ラジオ番組、ニッポン放送「ビートたけしのオールナイトニッポン」がスタートし、翌2月には、ツービート名義をのぞくたけし個人名義の最初の曲とみられ、過激なシモネタの歌詞を含む「俺は絶対テクニシャン」を発売した。

84年8月には「抱いた腰がチャッチャッチャッ」を出し、85年2月には後に「浅草キッド」と並ぶ代表曲とされ、同名映画の主題歌にもなったアップテンポな「哀しい気分でジョーク」をリリースした。

たけしは歌の才能や独特の「聴かせる」歌声も高く評価されている。音楽関係者は「少しかすれたような声で、ビブラート(声を震わせる歌い方)をきかせる歌い方は、聴く人をひきつけ、感動させるような力がある。お笑い芸人としての強烈な毒舌とのギャップがまた、魅力といえる」と分析した。

ただ、紅白歌合戦は生番組の「お祭り」的側面があるため、一部の視聴者がどこか「期待」し、逆にNHKサイドがハラハラしそうなのが、たけし独特の“危険なボケ”だ。

たけしは生番組や大きなイベントなどで、放送コードギリギリだったり、時にシモネタや、タブー寸前の時事ネタをからめた制作側が冷や汗を流すようなボケをさく裂させることが多い。

番組制作会社関係者は「『浅草キッド』は、郷愁感の漂う感動的な歌なので、歌唱中はさすがに、たけしはボケを織り込みにくいと推察されます。とはいえ、芸人の性(さが)がうずいて、ステージ上で、大みそかの無礼講的に“予定調和”をぶちこわすようなボケをかます可能性も十分考えられる。たけしの歌手としての初紅白は、歌唱力だけでなく、ある種のドキドキ感も楽しめることになりそうです」と話している。