フランス・パリ在住のミュージシャンで作家の辻仁成(60)が、新型肺炎の感染拡大を受け、現地の間でアジア人に対する偏見や差別が広がっている状況を伝えた。

辻は31日、ブログを更新。日本に帰国するため訪れたシャルル・ド・ゴール空港の様子について「いつもとぜんぜん雰囲気が違う。そもそもマスクをしないフランス人がマスクをしている。空港職員たちの半分くらいの人がマスクをしている印象だ。装着している人の数は羽田空港よりも多い気がする。中国の団体客がチェックインを待っているその横を、駆け足で抜けていく世界各航空会社のCAさんたち。中にはスカーフで口と鼻を塞いでダッシュするCAさんも数人いた」とつづり、「コロナウイルスの脅威が世界的に報道されるようになって、人々の意識が変わった」とした。

フランス人の友人たちからも「辻、日本に行くのなら、一番凄いマスクを大量に買ってきてくれ」と頼まれたという。「それほどの恐怖心がフランス国内でも広がり、これが思わぬ差別行動を助長させているようにもうかがえる」とし、続けて「中国の観光客が言葉を理解しないと思って、アジア系の観光客に『来るな』とヤジを飛ばしている子供もいたし、レストランやカフェによっては接客の遅い、というのか近づこうとしないギャルソンなどもいる」とつづった。

また、16歳の息子の周りでも「息子は風邪を引き、まだ咳込んでいるので、今日も、クラスメイトたちは息子に近づこうとしなかった」という。「中国人、日本人、韓国人の見分けはつかない。いつも一緒にいるクラスメイトでさえ、そういう行動をとってしまうのだ」と、現地で広がっているアジア人に対する拒絶反応についてつづった。

「パリ市内の通りでマスクをした中国人団体とすれ違う時に、通行人たちが慌てて逃げだしたとしてもしょうがない、単純な、批判はできない。怖いのだから仕方がない」と一定の理解を示したが、「未だそれが原因で事件は起きていないが、この先、何か月もこのような状態が続くと、パリ市内にも『中国人、アジア人出入り禁止』のような店が出てくるかもしれない」と懸念した。