行定勲監督(51)が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて完全リモートで撮影、製作した短編映画「きょうのできごと a day in the home」が24日、YouTubeで公開された。出演者に柄本佑(33)高良健吾(32)永山絢斗(31)2人組ラップユニットMOROHAのアフロ(32)浅香航大(27)有村架純(27)と今、人気の面々が顔をそろえたこともあり、平日午後8時に生配信がスタートした当初は1100人程度だった視聴者数は、45分間の配信が終了した際は3290人まで伸びた。

「きょうのできごと-」は、外出自粛の要請が出ている東京を舞台に柄本、高良、永山、アフロ、浅香が演じる学校の先輩、後輩が、ウェブ会議システムを通じて“バーチャル飲み会”に興じる物語。5人の話題の主なテーマは映画と男女の関係で、68年の米映画「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック監督)のような名作から、16年のカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された米国、ドイツ、フランス合作映画「パターソン」(ジム・ジャームッシュ監督)、さらにはアニメ映画「ドラえもん」まで、幅広いジャンルの映画が話題に上った。

先輩、後輩の男5人が話す中、有村が演じる女性が加わり物語が大きく転換する。6人の感情が入り乱れる男女の微妙な関係を描く作風は、有村が出演した17年の「ナラタージュ」、翌18年の「リバーズ・エッジ」にも通じる、行定映画ならではの恋愛劇だ。

今作は、田中麗奈、伊藤歩、妻夫木聡、柏原収史らが出演し、大学生の日常を描いた行定監督の04年「きょうのできごと a day on the planet」へのオマージュを感じさせる部分もある。白石和彌監督はツイッターで「冒頭の校歌から感慨深い。映画にも出てくる校歌。作詞は行定監督。もう16年も前なのか。景色がすっかり変わってしまった。行定監督がこだわる、なんでもない日常の愛おしさ、早く世界に戻って欲しい。」とコメント。行定監督も「ありがとう」と感謝のツイートを返している。

また、新型コロナウイルスの感染が全世界で拡大し、太平洋戦争以来の世界的な危機とも言われる中にある、今の日本を映像化した意義も大きい。行定監督は15年に故郷・熊本の美しさを伝える意図で「うつくしいひと」を製作。翌16年4月14日に熊本地震が発生すると、同10月に甚大な被害を受けた益城町で撮影を敢行し続編「うつくしいひと サバ?」を製作した。「きょうのできごと a day in the home」の製作は「記録し、忘れさせない、風化させない」という、映画のもう1つの力を信じ、訴える行定監督の映画監督としての生き方、考え方を貫いた取り組みにもなった。

劇中で、登場人物は映画館に行きたいという欲求を口々に吐露する。一方で、時にいら立ちをぶつけ合う中で、我慢して外出自粛を守るよう声がけしたり、反省し合う場面もある。映画の最後には「1日も早く映画を観に行ける日が来ますように」「いまは家にいてみんなで終息をめざそう」との視聴者への呼びかけもある。

行定監督はツイッターで「生配信無事終了しました。観てくださった皆様、ありがとうございました。観れなかった皆様、YouTubeのアーカイブを残しますのでそちらで楽しんでください」と感謝のコメントを発表。視聴者数は配信終了後も、増加し続けている。