新型コロナウイルスの感染拡大を受けた休業から5月中旬に営業を再開も、旧作の上映が中心だった東京の映画館に、ようやく新作の日本映画が帰ってきた。4日、都内各地で舞台あいさつが行われ、前日3日に開業したTOHOシネマズ池袋では、長沢まさみ(33)主演「MOTHER マザー」(大森立嗣監督)公開記念舞台あいさつが、同劇場と都内の神楽座を結び、リモートで行われた。

今回のリモート舞台あいさつは、TOHOシネマズが感染拡大防止のため、舞台あいさつの実施を控えていることを受けて行われた。東京の劇場と全国の劇場を結んで舞台あいさつを生中継するケースは少なくないが、メイン館のTOHOシネマズ池袋の観客の様子を神楽座のスクリーンに映し、長沢ら俳優陣がその様子を見て手を振ったり声がけをすれば、池袋の観客も声援で応える、観客参加型の新たな試みとなった。両劇場の音響が良く、池袋の観客の「映画、良かった」の声に、長沢も「本当にこんな大変な中、映画館に足を運んでいただきありがとうございます」と笑顔で感謝するなど、双方向のやりとりがスムーズに出来る“コール&レスポンス方式”に池袋の劇場内は沸いた。

リモート舞台あいさつが行われたスクリーン10は315席あるが、TOHOシネマズの感染予防のガイドラインに基づき、前後左右の席を1席ずつ空けて販売された。関係者によると、定員を大きく超えた応募があったという。観客たちは、スクリーンに向かって何度も手を振り、阿部サダヲ(50)の軽妙なトークに笑い、5秒間認められた撮影タイムには、スマートフォンや携帯電話をスクリーンにかざし、笑顔でシャッターを切り続けた

都内在住の30代の女性は「映画館で、大きなスクリーンで見ることが出来て良かった。やっぱり、いいですよね」と笑みを浮かべた。前日3日に東京で124人の新型コロナウイルスの感染者が確認され、特に池袋の感染者が急増していたため「不安はあった」という。ただ、スクリーン内は肌に風を感じるほど換気が行き届いており「(換気は)良かった。リモート舞台あいさつという貴重な体験が出来たので、プラスに捉えます」と口にした。

都内在住の別の女性も「換気は良く(スクリーン内の空気は)きれいだと感じた」と語った。これまで、俳優陣が登壇する舞台あいさつ付き上映に参加した経験はあるが「リモート舞台あいさつも、ちょっと面白いかな。自分たちの姿が、俳優の皆さんのバック(のスクリーン)に映っていた」と前向きに語った。その上で「コロナ禍は起きたけれど、こういうことが出来ると(全国の)いろいろな場所で新しいことが出来るかも知れない」と、コロナ禍によって生まれた、新たな形での観客参加型イベントの今後に期待した。

TOHOシネマズの関係者も「池袋は双方向のため、お客様の参加形式となり、喜ばれておりました。コロナ後の新しいイベントのあり方として注目しています」とコメントした。【村上幸将】