先月行われた、元NEWS手越祐也の緊急会見を取材した。場所は神田明神ホール。午後8時スタート。新聞の締め切り時間を考えると、遅い時間の設定だ。

だが、午後8時は、テレビだとゴールデン帯の中でもHUTが最も高い。YouTubeでも、この時間帯が最もアクセスの多い時間なのだろう。会見の生中継をより多くの人に見てもらいたいという手越サイドの思惑がにじむ。視聴者数はピークで100万人を超えたとされており、この点においては成功だったように思う。

神田明神ホールは、ライブや舞台公演などに使われている。通常のキャパは約700人で、会見に訪れた報道陣の数は関係者によると124人。ソーシャルディスタンスを意識した努力のあとは見えた。記者は1社1人と限定したり、テレビ局もカメラは番組別ではなく1クルーと制限をかけた結果だ。それでも、会場後方に陣取ったテレビカメラの台数は約20台。テレビだけでなく、通信社や新聞社を含むウエブメディアを含めて、今回の会見はかなり拡散された。

スポーツ紙や女性誌などの芸能メディアはもちろん、テレビのワイドショーも含めて、手越の会見はさまざまな角度から報じられ、論評もされた。全部を検証したわけではないが、感覚でいうと7対3でネガティブな論調が多かったように思える。

それでも、手越にとっては、あくまでも自分の意見を自分の言葉で自分の口から語ることを尊重した。だから、スーツにネクタイ姿ではなく、ラフなジャケット姿を選択したのだろう。週刊文春のインタビューに応じたアンジャッシュ渡部建のいでたちとは違う。いわゆる世間に迎合しようとも思わないのだ。

だから、コロナ禍での自粛期間中に女性を同伴して食事していたことなどは、それほど悪いとは思っていない。3月にジャニーズ事務所に退社の意志を伝え、もう辞めるつもりだったから、事務所の通達は知っていたが、法律に違反しているわけではないので、なぜ、そんなに責められねばならないのか、という論調だった。

そう、今回の手越の会見は、独立を宣言する場でしかなかったのだ。

昨年暮れから、芸能界ではいわゆる独立が続いている。

ちょっと、列記してみる。

安田美沙子、忽那汐里、伊原剛志、草刈民代、小雪、栗山千明、ヨンア、TKO木下隆之、岡田結実、米倉涼子、長谷川潤、中居正広、柴咲コウ、原千晶、有森也実、菊池桃子、神田うの、ローラ…。

もちろん、ここに挙げた芸能人は一部だ。退社した事務所も書けばわかると思うが、大手芸能事務所も少なくない。そして、半年間で、これだけの芸能人が独立したことに驚く。時代が変わってきたことを実感する。

ひと昔前なら、大手芸能事務所からの独立はそう容易にはいかず、話し合いがこじれれば、円滑な活動がうまくいかないことも。それが、今は、少し変わってきた。

テレビや新聞や雑誌、映画や舞台やレコードといった旧メディアしかない時代は、メディア側と芸能界側は共存共栄の関係だった。このギルドから外れると、生きていくのも厳しい。でも、今では、個人でメディアをもつ時代。手越も会見でそのことを強調していた。

手越は会見でジャニーズ事務所を辞める理由を語った。それは、自分がやりたい仕事を認めてもらえなかったことだという。ただ、そのできなかった仕事を挙げたのだが、それほどハードルが高いようには思えなかった。

ここからは推測だが、ジャニーズ事務所側は手越の意向は検討はしたものの、事務所の総合的なジャッジで許可をしなかったのだと思う。そのことで、両者の間で齟齬(そご)がおきたとしても、事務所は相対的な現状の維持を選んだのだろう。

そうなると、手越は自分のマネジメントに不安をもつ。大手事務所の軒先がある安定感を理解しつつも、今後の事務所内での伸びしろや自由度を勘案した結果、「退所」という選択肢を選んだのだろう。

この選択が正解だったのかどうか。その解答は手越サイドが握っている。【竹村章】