6代桂文枝(76)の弟子の作家夏川立也氏(54)が、著書「復職後再発率ゼロの心療内科の先生に『薬に頼らず、うつを治す方法』を聞いてみました」(日本実業出版社)を出版した。精神科医の“亀仙人”ことボーボット・メディカル・クリニック亀広聡院長との共著。薬を使わず、食事や運動、そして自分のトリセツを知ることで「心の骨折」のようなうつからのリハビリの大切さを説いている。

夏川氏は「がんで胃が痛い人に痛み止めをあげ続けてもがんを治せない。それと同じで、西洋医学の薬に頼るのをやめて、体内時計を整えて漢方の力を借りることでうつを克服していく」と説明している。

夏川氏は2浪後、京大工学部に入学。88年、大学3年時に文枝(当時三枝)が創設した「お笑い維新塾」に応募して「息子の家庭教師にちょうどええ」と合格して、2代目の塾長も務めた。元祖高学歴芸人として、京大の後輩と漫才コンビを組んでデビューした。「京大だから兄弟で、ザ・ブラザーズだったんですけど、親バレした後輩が泣く泣く引退したのでピン芸人になりました」と振り返る。

朝日放送の深夜番組「ナイトinナイト」のレギュラーを持つなど、関西ではそこそこ売れた。「でも、芸人だけじゃ食っていけないのでバイトをしていて、その延長で25歳の時に広告会社を設立しました」。芸人活動よりも、社長業が本業になっていった。

転機になったのが08年のリーマン・ショック。「事業よりも、もう1回しゃべりで勝負してみようと思って、笑いを通じたメンタル活性化やコミュニケーション術の講演会を始めました。笑いのロジック(論理)を、一般性の高い理屈に落とし込みました」という。ここ10年間は、年間200回の講演会をこなしている。

30年代半ばで芸人活動は止めたが、文枝について「今でも師匠。師匠と弟子の関係は一生続きます。正月には会いに行って、ちゃんとお年玉をもらっています」と笑う。「70歳を超えても元気ですけど、昔よりは丸くなられました(笑い)。一番長くテレビに出続けている方ですし、落語もずっときちんとやられている」と、尊敬の念を持ち続けている。

◆夏川立也(なつかわ・たつや) 1965年(昭40)12月9日、大阪府生まれ。86年京大工学部入学。88年「お笑い維新塾」入塾して、桂三枝(当時)に弟子入り。漫才コンビ、ザ・ブラザーズ結成。89年朝日放送「ナイトinナイト」レギュラー。91年広告界会社設立。96年映画「サラリーマン専科2」。