1983年(昭58)の映画「時代屋の女房」、96年の「美味しんぼ」などで知られる、映画監督の森崎東さんが16日、亡くなったことが17日、関係者への取材で分かった。92歳だった。

森崎さんは、1927年(昭2)に長崎県島原市に生まれ、京大法学部を卒業後、1956年(昭31)に松竹京都撮影所に入社した。その後、大船撮影所に移り、野村芳太郎監督、山田洋次監督の助監督、脚本などを担当。67年の野村芳太郎監督の「女の一生」では脚色として参加。69年の「喜劇・女は度胸」で、監督デビューした。70年の「男はつらいよ フーテンの寅」など喜劇の製作に取り組み続けた。

74年にフリーとなり、翌75年には「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」を製作、公開。庶民の生きざまをユーモラスに描いた作品を、次々と世に送り出し、後進の監督や映画人にも多大な影響を与えた。96年に漫画「美味しんぼ」を実写化し、実の親子の三国連太郎さんと佐藤浩市を起用したことでも話題となった。2004年(平16)に発表した「ニワトリはハダシだ」は、世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭フォーラム部門に招待され、東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。

13年(平25)には、9年ぶりの新作として、認知症の母との交流を切なくもユーモラスに描いた、岡野雄一氏の漫画を実写化した「ペコロスの母に会いに行く」を公開。キネマ旬報ベスト・テンで日本映画1位に選ばれ、再評価の声が高まった。「ペコロスの母に会いに行く」は、主演の赤木春恵さんが88歳にして映画初主演を果たし、「世界最高齢での映画初主演女優」としてギネス世界記録に認定されたことでも話題となった。同作は18年11月に亡くなった赤木さんの遺作となったが、森崎さんにとっても遺作となった。