仲野太賀(27)が22日、サン・セバスティアン映画祭(スペイン)コンペティション部門に選出された主演映画「泣く子はいねぇが」(佐藤快磨監督、11月20日公開)記者会見に出席した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて俳優、監督の現地への渡航がかなわず、東京と現地をインターネットでつないで、リモートで会見を行い、その後、日本メディア向けの会見を開いた。

仲野は、1月の秋田県男鹿半島の海辺で全裸で走り回るシーンを演じた。日本メディア向け会見で、そのことについて聞かれると「1月の秋田の海。死を覚悟する寒さだった」と振り返った。その上で「スタッフは環境を整備して、裸一貫(で演じるシーン)に至るまで準備して頂いた。でも、あの寒さは過去イチ」と苦笑いした。撮影中、数テイクを撮ったが撮影時間は数分だったという。スペインとリモートで結んだ会見で、現地の記者からは全裸に関する質問は出なかったが、現地での上映を前に「喜んで頂けたら」と笑った。

「泣く子はいねぇが」は、佐藤快磨監督(31)の商業映画デビュー作で、故郷の秋田県男鹿半島の伝統文化「なまはげ」をテーマに完全オリジナル脚本を完成させ、構想から5年をかけて完成させた。主人公たすく(仲野)は娘が生まれて喜びの中にいる一方、子供じみて父になる覚悟が見えず、妻ことね(吉岡里帆)からいら立たれていた。そして大みそかに参加した地元の伝統行事「なまはげ」で泥酔し、全裸で男鹿の街へ走りだした。その姿がテレビで全国放送され、ことねには愛想を尽かされて離婚され、地元にもいられなくなり逃げるように上京した。親になること、大人になることから逃げた、たすくが過去の過ちと向き合い、不器用ながら青年から大人へ成長する姿を描いた。

佐藤監督は、仲野が全裸になるシーンを盛り込むにあたり、地元の男鹿の人々から「なまはげは神だから、泥酔して裸になるのはやめてくれ」と反対の声があったと明かした。その上で「父が子供を守ることで父として育まれる側面を描きたいと説得し、映画化にこぎ着けた」と語った。

企画を務めた是枝裕和監督(58)は「企画と言いますが、僕は最後の最後で背中を押したくらいの関わり。長編デビューを良い形で送り出すことができ、ホッとしています」と自らの立ち位置を説明。その上で、コンペティション部門に選ばれたことについて「本コンペ…まじか? と思い、再確認した。僕は2本目…しっと込みで」と笑った。仲野が全裸で演じたシーンについては「(男鹿での)了解が得られず、脚本も書き直しがあった。佐藤監督がやりたいことをちゃんと理解してもらえるよう、良くないリアクションが出た時、誠実にやりとりしていた。仲野さん含め、よく頑張った」とたたえた。

サン・セバスティアン映画祭の授賞式は26日(現地時間)に行われる。