米俳優トム・クルーズ(58)が、英ロンドンで撮影中の映画「ミッション:インポッシブル」シリーズ第7弾の現場で新型コロナウイルスの感染対策を怠ったスタッフに激高する音声データが流出して波紋を広げる中、5人のスタッフが音声が公になった後に辞職したと英ザ・サン紙が報じた。ソーシャルディスタンスを無視して近距離で会話する2人のスタッフを見たクルーズが、汚い言葉を交えながら「次に同じことをやったら、クビだ。もうここにいなくていい。他のやつらも同じだ」などと怒鳴る音声は、世界中に大きな衝撃を与え、米国でも主要メディアが大々的に報じている。

現場は数か月間にわたって緊迫した状況が続いていたといい、15日にザ・サン紙が音声を公開した後も事態は沈静化するどころか逆に緊張感と怒りにあふれ、再びクルーズが暴言を吐いたことが引き金となって耐えられなくなったスタッフが去っていったと同紙は伝えている。ハリウッドでは新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で多くの映画が撮影中止となり、公開延期も相次ぐ中、大作映画の撮影では感染予防対策に多額の費用が投じられている。アメリカでは映画館の存続も危ぶまれる中、ハリウッドを背負っていることを自負するクルーズは重圧を感じ、感染予防を軽視するスタッフが許せなかったのではとも言われている。

ネットではスタッフへの虐待だなどと批判する声もあるが、俳優ジョージ・クルーニーは出演したラジオ番組で「彼は間違っていない」と擁護。「大げさではない。別のテレビ番組でも助監督の友人がまったく同じことが起きていると話している。(クルーズは)全ての人に対する責任があり、撮影が中断すれば多くの人が職を失うことになるとみんな理解しなければならない」と語った。クルーズの代理人は、現時点でこの件に関してコメントは出していない。(ロサンゼルス=千歳香奈子)