トランプ前米大統領が、19年にベトナム首都ハノイで行われた第2回米朝首脳会談後に北朝鮮の最高指導者金正恩氏に対し、「大統領専用機エアフォースワンに乗って北朝鮮まで帰らないか」と誘っていたと英BBCテレビが伝えた。BBCが制作するドキュメンタリーシリーズ「Trump Takes on the World(トランプ氏が世界に挑む)」の中で、トランプ政権で国家安全保障会議アジア上級部長を務めたマット・ポッティンジャー氏が明かしたものだという。同首脳会談は合意には至らず物別れに終わったにも関わらず、トランプ氏は帰り際に大統領専用機で送り届けると不可思議な申し出をしたと伝えている。

ポッティンジャー氏によると、トランプ氏は金正恩氏が北朝鮮から中国を経由して数日かけて列車でハノイ入りしたことを知っており、「お望みならば、2時間で自宅まで送り届けることができる」とオファーしたが、同氏はこの申し出を断ったという。同席していた大統領補佐官も、この発言には驚いていたと明かしている。同番組ではこの会談にも同席しトランプ氏の暴露本を出版して話題になった大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏へのインタビューも行っており、トランプ氏は金正恩氏を新しい親友だと感じており、2人は相棒なので米朝関係は素晴らしいものだと非常に危険な認識を持っていたと明かしていると英サンデー・タイムズ紙は伝えている。

トランプ氏は17年に短距離弾道ミサイルの発射を繰り返す金正恩氏を「小さなロケットマン」と呼んで非難したが、翌年にシンガポールで行われた初会談の際には友好の証しとして地球上で最強といわれる大統領専用車ビーストの内部を見せていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)