フランスで開催中のカンヌ映画祭「ある視点」部門でオープニング上映されたフランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の合作映画「ONODA(原題)」(アルチュール・アラリ監督、今秋公開)の公式会見が8日、カンヌで行われた。会見場と都内をリモートでつなぎ、新型コロナウイルス感染対策のためスケジュールが合わず現地入り出来なかった、主演の遠藤雄弥(34)と津田寛治(55)がリモートで参加した。

2人には、カンボジアでクランクインし、かつフランス人スタッフが中心だった撮影で、日本における撮影との違いを問う質問が飛んだ。遠藤は「文化、言葉の面も違いがある。通訳を通して、どこまでコミュニケーションできるかなという思いが正直あった。けれども、監督とセッションして作り上げていく中で、映画は文化と言葉の壁を越えるんだと思った。これほどまでにコミュニケート出来て、映画を作っているという運動を通して、意思の疎通が出来るのかと僕自身、驚いた。クランクアップまで、驚きは続いた」と語った。一方で「昼食をカンボジアのロケ地でテントを張って、みんなで食べるのが好きだった。我に返るわけじゃないけど、ランチの時間がすごく好き。日本では感じられないのではないか?」と製作以外のフリータイムも、日本より伸びやかだと語った。

津田は「日本とフランスで映画を撮るということは、かなり違うことなんだと如実に感じた」と口にした。その上で「日本で映画を撮るのは結構、大変なこと。まずお金を集めて、クランクインしたけども途中でお金がなくなって撮影できなくなったりとか、クランクインすら出来ずに消えてしまう映画の話も、たくさんある。撮影が始まると、自分の生活より先に映画を完成させることを目標に、ほとんど寝ずに目を真っ赤にさせて映画を完成させる」と日本の現状を語った。そして「『ONODA』で日本を代表する日本兵を演じるに当たって、今まで以上の情熱と全精力を振り絞ってカンボジアの現場に入った」と語った。

その上で「ONODA」の撮影現場について「ビックリしたのが、ケータリングの豪華さ。すごいおいしそうな料理がたくさんあった。僕は減量中で食べられなかったけれど、こんなに幸せでいいかなと」と語った。さらに「もう1つ、ビックリしたのは週休2日、フランスの現場は。日本の現場はあり得ない。走りだしたら止まっちゃいけない、クランクアップまで。気が付いたら、スタッフが家族も連れてきている。日本ではあり得ない。2週間に1回、家族のためにパーティーもする」とも語った。

津田は、日本とフランスの撮影現場の違いを紹介した上で「子供がいっぱいいて、楽しげに撮影している時に思ったのは、フランスでは撮影は非日常ではなくて、生活の一部だから、どんなにハードな話、現場であろうが、楽しく撮影しないと、この先、続いていかないからだと。何て、いい国なんだ…日本でも、こういう日が早く来れば、うれしいな」と語った。

会見後、都内で取材に応じた津田は「ぜひ、フランスの俳優に自分たちが恵まれていると思って欲しい。でも、僕は今の日本の映画作りが、そんなに大変だとも個人的には思っていない」と口にした。その上で「もっと、作品のクオリティーを上げる意味では、予算がちゃんとつかなければいけないし、それこそ国が、もし、ある程度、保障してくれたら、どんなにクオリティーって上がるのかと。監督、俳優にしろ、世界に負けない素晴らしいクリエーターが日本がいますからね。ノーベル賞もそうですけれど、国がちゃんと予算をつけてくれたら、ものすごいパフォーマンスを発揮する人たちばかりが集まっている国が、日本だと僕は思っている。そこには惜しまずお金をかけて欲しい」と訴えた。

映画は、太平洋戦争後も任務解除の命令がないままフィリピン・ルバング島で過ごし、約30年後の1974年(昭49)に51歳で日本に帰還し、14年に91歳で亡くなった旧陸軍少尉の小野田寛郎さんの史実を元に、フランスの新鋭実力派監督のアルチュール・アラリ監督(39)が手掛けた。遠藤は小野田さんの青年期、津田はその後を演じた。