上方落語の重鎮、笑福亭仁鶴さん(本名・岡本武士=おかもと・たけし)が17日に骨髄異形成症候群のため、大阪府内の自宅で亡くなっていたことが20日、分かった。84歳。所属の吉本興業が発表した。

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臨機応変な芸風とは裏腹に人格は頑固。仁鶴さんは6代目の筆頭弟子で、6代目は生前、7代目に仁鶴さんを推挙するよう伝えていたとされるが、仁鶴さんは「松鶴は松竹芸能の名前」と固辞。90年代前半には7代目襲名騒動が起こり、仁鶴さんが6代目の7番弟子だった松葉さん(故人)を、まじめな芸風と誠実な人柄を理由に7代目に指名した。ただ、松葉さんの兄弟子は当時5人おり、襲名が決まるまで時間を要し、その最中、松葉さんが急死し、7代目の名跡は、追贈の形で贈られた。

器用、多才でありながら、しっかりと太い筋が1本通った芸風には人柄が表れた。弟子には「品性を保ち、下劣はす(る)な」と言い続けた。高座では「えー」のつなぎ言葉を安易に使うなと繰り返し指導。安易な気持ちで高座に上がらぬよう、事前にまくらから話をまとめて出演するよう、心がけからを説いた。正調で耳に優しい大阪弁、泰然としたたたずまい、と、硬軟あわせもつ芸風は不世出とも言われ、上方落語界も、大きな損失になった。