東京国際映画祭が8日、閉幕し、都内でクロージングセレモニーが行われた。東京グランプリ/東京都知事賞はコソボ、北マケドニア、アルバニア合作映画「ヴェラは海の夢を見る」(カルトリナ・クラスニチ監督)が受賞した。

また、今年から新設された新人監督賞「Amazon Prime Videoテイクワン賞」には「日曜日、凪」の金允洙監督(キム・ユンス=35)が選ばれた。

金監督は、審査委員長の行定勲監督(53)の01年「GO」に触発され、映画を作り始めたという。「在日コリアンを主人公にした『GO』という映画があって当時、僕は登場人物と同じような学校に通っていて、ぼんやりと映画を作ってみたいなと思い始めた高校1年生だったんですけど…渋谷の映画館で見ました」。

金監督は行定監督を真横に「行定監督が審査委員長を務められた、この賞を受賞することになるとは、当時の僕は1ミリも想像していなかったと思います。現実になったのは、シンプルに僕が映画を作ったからだと思います」と感慨深げに語った。

ウイットの効いたコメントで、会場も笑わせた。壇上で審査員の渡辺真起子からささやかれた内容を明かし「写真を撮られている時に、ずっと『顔が怖い』と小さい声で言われたんですけど…すみません、もともとこういう顔です」と苦笑交じりで口にした。さらに「Amazonで、これまで、たくさん買い物してきて良かったなと思いました。いつもお世話になっています」と言うと、客席からドッと笑い声が起きた。

その上で、金監督は「想像もしない出来事が起きたり、景色が見えたり、想像の外にいた人たちと会えたり、自分の想像の地平線を広げるような映画を、これからも作っていきたい。賞を大切な、素敵な1歩に出来るようにしたい。東京国際映画祭、次は長編映画で戻ってくると思います」と新たな挑戦を高らかに宣言した。

Amazon Prime Videoテイクワン賞は、東京国際映画祭が、さらなる才能の発掘を目指してAmazonプライムビデオの協賛を得て新設したもの。これまで商業映画の監督、脚本、プロデューサーを担当したことがない日本在住の映画作家の15分以内の短編作品が対象で、応募期間は約2カ月間と短かったにも関わらず223作品の応募があった。金監督には、賞金100万円とAmazonスタジオでの長編映画製作を模索する機会が提供された。また「橋の下で」の瑚海みどり監督(さんごうみみどり=49)にも当初、予定になかった審員員特別賞(50万円)が贈られた。

行定監督は「9作品、力のある作品ばかりで審査会が紛糾し、3時間超えになった。改めて映画は比較するものじゃなくて、それぞれに刺さったところ、視点で見て心動かされたところを熱く語っているのが美しいなと思った。『橋の下で』は僅差で次点になったため審員員特別賞を贈ることにしました」などと総評を語った。