先日、東京国際フォーラムで行われた、歌手松山千春(65)の全国ツアー東京公演を取材した。

10月発売の82枚目シングル「敢然、漠然、茫然」を掲げてのツアー。千春がフォーラムで歌唱するのは2年ぶりだ。「大空と大地の中で」や「銀の雨」「恋」「長い夜」「旅立ち」などヒット曲を連発。ファンにとってもたまらない公演となった。

コロナ禍はコンサートの帝王の千春も苦しめた。これまで、年に2回のツアーを開催してきたが、昨春のツアーは途中で中止に。昨秋、今春はツアー開催すらできなかった。やっと、今秋はツアー開催にこぎ着けたが、この国際フォーラムもキャパの65%までしか観客を入れることはできず、この日も約3000人しか入れない。千春のコンサートはプラチナチケットになっているだけに、2年ぶりのフォーラムということもあり、ファンはチケット入手にかなり苦労したようだ。

それでも千春は「2階席から下を見ると、かなり、客席が空いているだろ。千春の人気もかなり落ちてきたと思っているだろう」などと笑わせた。

千春のコンサートといえば、ファンの半分以上は、歌はもちろんだが、そのトークに期待している。「おまえら、いいか、ここだけの話だぞ」との枕ことばはあるものの、文字に起こすと、物議を醸し出したり、かなり危うい発言も多い。ただ、そこも千春の魅力となっている。

フォーク界の大御所は今も元気だ。吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげるらフォーライフ勢を筆頭に、小田和正、さだまさし、谷村新司、南こうせつ、伊勢正三、中島みゆき、などなど。全盛期ほどではないにせよ、今でも動員力に衰えを見せない。ただ、これら大御所がみな、仲がいいかといえば、そうでもない。コンサートでの共演があるかないか、フェスで顔を合わせるかどうかで、そのあたりの人間関係がわかる。

千春のトークの中で、仲が悪いとして登場するのが、さだまさしとアリスの谷村新司だ。千春ファンにとっては、さだと谷村への“口撃”は定番になっている。

この日の公演でも、前日に、都内で行われた、20年に亡くなった作曲家の服部克久さん(享年83)の追悼コンサートに出演した話になった。千春は服部さんにアレンジしてもらった「電話」を歌ったが、基本的に1人1曲という設定のため、出場歌手は多く、楽屋の数も足りなかったようだ。そこで、なんと、さだ、谷村と同じ楽屋だったという。

千春はいつものように「あれほど嫌いなさだ、谷村と一緒なんだ。さだが『千春、ツーショットで写真を撮ろう』って、腕を組んでくるんだ。奇跡のツーショットって言うんだけど、こっちは奇跡の作り笑いだ」と笑わせた。

取材する側としては、この“奇跡のツーショット”を見てみたい。ただ、千春のフォーラム公演には数多くの生花が贈られていたが、そこにさだまさしの名前があったことを最後にお伝えしておく。