米アカデミー賞の前哨戦として知られるゴールデングローブ賞が9日(日本時間10日)発表され、濱口竜介監督(43)の映画「ドライブ・マイ・カー」が非英語映画賞を受賞した。邦画では市川崑監督の「鍵」(59年)が60年に旧名称の外国語映画賞を受賞して以来62年ぶりの快挙となった。

「ドライブ-」の勢いが止まらない。前日8日(同9日)発表の全米批評家協会賞でも作品賞、監督賞(「偶然と想像」と併せて)、脚本賞、西島秀俊(50)がアジア人初の主演男優賞と主要4冠を獲得。既に米国内の映画賞や各地域の映画祭で18の賞を受賞していたが、ハリウッド外国人記者協会が主催するゴールデングローブ賞をも制し、映画を専門に見る“目”から高評価を得た。

加えて映画愛好家として知られる、オバマ元大統領が昨年12月17日にツイッターで発表した、毎年恒例のお気に入り映画で紹介された14本の最上位に挙げられたことも世界中で話題を呼んだ。西島も米ニューヨーク・タイムズ紙選の今年を代表する13組の俳優にアジアから唯一、選ばれた。

アカデミー賞(3月27日授賞式)の国際長編映画賞(旧外国語映画賞)部門では、授賞対象を15作品に絞り込んだリストにも選ばれている。主催の映画芸術科学アカデミーは俳優、プロデューサー、監督をはじめとした映画の作り手が投票権を持っており、記者や評論家とは違う観点で選考される可能性はある。ただ、米国で広く知名度を上げ、支持されているのは事実で、2月8日に発表されるノミネート入りと、その先への期待は大きい。

◆「ドライブ・マイ・カー」 濱口監督が村上春樹氏(72)の同名小説を含む3本の短編を投影し、長編映画の脚本を書き上げ、カンヌ映画祭で邦画初の脚本賞を受賞。舞台俳優で演出家の家福(かふく)悠介(西島)は妻音(霧島れいか)が秘密を残して亡くなった2年後、演出を任された広島の演劇祭に愛車で向かい、寡黙な運転手渡利みさき(三浦透子)と過ごし目を背けたことに気付かされる。第34回日刊スポーツ映画大賞で作品賞、主演男優賞受賞。

◆「鍵」 市川監督が、谷崎潤一郎の同名小説を映画化。古美術鑑定家の剣持(二代目・中村鴈治郎)は、老化と精力減退で妻郁子(京マチ子)を満足させられず悩む一方、郁子も剣持を嫌っていた。娘敏子(叶順子)の恋人木村(仲代達矢)が家を訪れた際、酔って浴室で眠った裸体の郁子を寝室に運ぶのを手伝わせるなど、剣持は木村を妻に接近させることで、性欲をかき立てようとする。