当時17歳だった米国人女性から性的暴行を受けたとして民事訴訟を起こされていた英国のアンドルー王子(61)が、15日に和解金を支払うことで合意に達したが、その出どころを巡ってエリザベス女王が一部を負担するのではないかとの臆測が出ている。和解の詳細は非公開となっているが、英デイリー・テレグラフ紙は和解金は1200万ポンドで、その一部を母であるエリザベス女王が提供すると報じた。原資は女王の私有地であるランカスター公爵領から得られる収入で、税金は使われていないと伝えている。和解金の出どころについては、王子の代理人もバッキンガム宮殿もコメントを控えている。

2019年に疑惑の責任を取って公務から引退したアンドルー王子は、年間25万ポンドと言われた収入源を失っており、現在は年間2万ポンドと推定される王立海軍の年金に加え女王からの援助としてランカスター公爵領からの収入の一部も受け取っているとみられている。報道によると、原告のバージニア・ジュフリーさんへの支払い1000万ポンドに加え、性的目的の人身取引の被害者を支援する慈善団体への寄付金200万ポンドも支払うことで合意しており、英国内では公的な資金が使われていないか知る権利が納税者にはあるとの声が上がっているという。

ジュフリーさんは昨年8月、2001年に米ニューヨークや英ロンドンなどで計3回にわたってアンドルー王子から性的暴行を受けたと主張し、精神的、心理的苦痛を理由に損害賠償を求める訴えを起こしていた。アンドルー王子は当初、性的人身売買の罪で訴追されて勾留中の19年7月に自殺した米富豪ジェフリー・エプスティーン被告を介して王子と会ったりするジュフリーさんの主張を否定し、性的暴行疑惑についても「記憶にない」と語っていた。

エリザベス女王の三男で、王位継承権で9位のアンドルー王子は、軍の肩書と慈善団体の後援者の役職を剥奪され、公的な場での敬称「殿下(His Royal Highness)」の使用もやめると王室の情報筋は明かしている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)