フジテレビ系トークバラエティー「はやく起きた朝は…」(日曜午前6時30分)は、今年4月に前身から29年目の放送に突入した。プロデューサーを務めるのは、同局「オレたちひょうきん族」の“ひょうきんディレクターズ”の三宅デタガリ恵介としても知られた、三宅恵介エグゼクティブディレクター(73)。テレビ業界歴52年目の三宅さんに、現在のバラエティーの問題点について聞いてみた。

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今年4月に放送倫理・番組向上委員会(BPO)の青少年委員会から「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解が出された。三宅さんは現在のバラエティーには、演じ手にも演出家にも問題点があると指摘した。

「笑いを取るには、それなりのフリが必要。罰ゲームを受けても、人にかわいそうと思われないフリがあれば許される。例えばドラマで、夫婦げんかで浮気をしてきた旦那さんを、奥さんがバーンとひっぱたいても、みんな納得する。ということは、ひっぱたくだけの理由があればいいんですよね。それを笑いではフリと言う。だから罰ゲームでも本当に悪いことを、酷いことをやったんだと、このくらいの罰は受けてもいいだろうと視聴者が思えるぐらいのフリを作らないといけない」

ドッキリにも、フリが必要だという。

「昔はドッキリでも、ポーンと飛び出て来てびっくりさせてというのでも、笑えりゃ面白いんだというのがあった。だけど、水をぶっかけただけの現象だけでは、今はいけない。ドッキリを仕掛けられる方に、こいつには言ったって分かんないからダメだという状況を作らないと。ドッキリでだましてやろうというフリがあれば、見てる方は納得すると思うんですよ。だから、それなりの演出意図がちゃんとあって、こういうことをしてるんだという自負がなければいけない。いろいろなことを言われても、いやこうなんですと言えなきゃいけない」

現在のバラエティーは、少しでも問題があるとネットで炎上する。

「SNSで拡散されるのが怖いとか、スポンサーにクレームが行っちゃうのが怖いからやめときましょうとかね。もちろんそういうこともあるけれども、『いや、これはこういう意図でやったんだから、フジテレビとしては放送します』と言えなくちゃダメ。まあ、フジテレビじゃなくてもね、放送しますという確固たるものがあればいい。そういう風に、ちゃんとしてりゃいいんです。その上で基本的な、うそをつかないとか、視聴者に嫌な思いをさせないっていうのを守って番組をつくればいい。そういうことを、ちゃんとクリエーターとして持っていればね。SNSの言いなりになる必要はない、うまく利用すればいいと、笑いに関しては思うんです」

それでも、今のバラエティー作りは大変だ。

「それはね、昔からそうなんですよね。ドリフターズなんかでも、SNSがない時代だったけど、食べ物を粗末にしてとか苦情がいっぱいあった。だから今は、そういうのはやらない。食べ物を粗末にしてと思わせたらダメなんですよ。でも、子供は喜んでたじゃないか、というのはある(笑い)」【小谷野俊哉】(続く)

◆三宅恵介(みやけ・けいすけ) 1949年(昭24)2月5日、東京都生まれ。慶大経済学部卒業後、71年にフジポニー入社。「欽ちゃんのドンとやってみよう!」「笑っていいとも!」「ライオンのいただきます」「タモリ・たけし・さんまBIG3世紀のゴルフ」「あっぱれさんま大先生」「ライオンのごきげんよう」などのディレクターを務める。80年フジテレビに転籍。81~89年の「オレたちひょうきん族」では「ひょうきんディレクターズ」の「三宅デタガリ恵介」としても活躍。90年からクリスマス深夜放送の「明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー」では、今も演出を務める。04年4月スタートの「はやく起きた朝は…」(日曜午前6時30分)では番組開始からプロデューサー。09年の定年退職後もフジテレビに嘱託のエグゼクティブディレクターとして在籍。千代田企画社長。