「裸の小説家」が誕生した。原田龍二(51)が16日発売の「精霊たちのブルース」(万代宝書房)で、小説家デビューを果たす。自身の経験を元にした紀行小説。ベネズエラのジャングルで出会った少数民族「ヤノマミ族」との心の交流が描かれる。小説への思い、「裸俳優」の原点などを赤裸々に語った。

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「首長との約束を果たすのに20年かかっちゃったな。かかりすぎたな」。原田は2000年、テレビ番組の企画でヤノマミ族を訪れた。その首長から「我々の存在を伝えてほしい」と頼まれた。交流に強い感動を覚えた原田は、帰国後に小説を執筆。約20年の時を経て、ようやく日の目を浴びた。「僕の夢だった」。

安定感のある演技とバラエティー番組などでみせるおちゃめさのギャップが魅力の原田。今回、「意外」ともいえる才能を発揮した。「ほとんどの人が原田龍二はこういう本を書けるって思っていなかったはず。でも昔から文を書くのが好きで、これはぜひ、一石を投じたいというか」。

現地に行ったことで、ある種の使命感にかられて筆を進めた。「においとか、手触りみたいなものを文章で書けるんじゃないかと」。

原田は「裸俳優」と称される。そこには裸で生活するヤノマミ族との出会いが大きく影響していた。取材日の写真撮影時、ダメ元でリクエストすると当たり前のようにTシャツを脱いだ。「よく『ふんどしが僕の正装です』って冗談半分でいうんですけど、半分以上本音ですね。着飾っていない潔さっていうんですかね。彼らの姿が美しかった。筋骨隆々じゃなくても、裸を彼らは恥ずかしがったりしない。僕の中では、裸のことを語る時には彼らのかっこよさがイメージとしてある。僕もそれにあやかりたいなっていう。まさに原点ですね」。

次作も期待されるが「自分の中では、これは序曲」とニヤリ。「これはすごいぞっていうのを書きたいっていう夢があります」と野望を明かした。テーマは「アウトロー」。「最高に危ないのを作ろうと。僕は幸いというか、ちょっとはみ出していた部分もあるので(笑い)、経験してなければ書けないものを自分の文章力で、輝かせたいなっていうのは夢としてはありますね」  【佐藤成】

◆「精霊たちのブルース」 文化人類学を専攻する主人公が、教授とともに、フィールドワークでヤノマミ族を訪れる。言葉が通じないながら交流をする中で、感動・衝撃を覚える主人公の心の動きが繊細に描かれる。