吉永小百合(77)が2日、12年公開の主演映画「北のカナリアたち」のロケ地、北海道・礼文島で開催された公開10周年感謝の集いに出席した。会場の北のカナリアパークは、撮影用に建てられた校舎を軸に翌13年7月に開園。昨年までに27万人が訪れる名所になった。劇中で生徒を演じ13年の開園時、ともに訪れた6人の子役も成長し、全員が芸能の道に進んだ。吉永は「役者冥利(みょうり)に尽きます」と目を細めた。

10年で身長を追い抜いた生徒たちを見詰める、吉永の口元から笑みがこぼれた。撮影後は年に1度開いた同窓会を、昨年はコロナ禍で見送った。2年ぶりに再会した前夜は、バーベキューに舌鼓を打ち「もうすぐ20歳になる方もいる。ちょっぴりお酒もいただくことができ、本当にあっという間」と感慨深げに語った。

礼文町は、島における初の本格的な映画の撮影を行った10年前の時点で、校舎を残して公園にするプランを示していたが、20年にはカフェまでオープン。吉永も当時、教え子役の松田龍平ら若手俳優陣と子ども時代を演じた子役たちに、日本映画のバトンをつなぎたい思いを口にしており、レガシーは確実に残された。

続編への期待もあふれた。小笠原弘晃(20)が「みんなで話しまして…大人バージョンのカナリアもやりたい」と言えば、阪本順治監督(63)も「タイトルは決めた。『北のカナリアども』です」と言い、集まった300人を笑わせた。

吉永は、6人に「大変なの、分かっているのかなという心配もあります。見守っていきたい。(共演も)面白いと思う」とエールを送った。その上で「年齢的にも、どこまで自分はやれるのかという不安も大分、出てきているので、考えながら歩いていけたら」と自らの今も冷静に見詰めた。【村上幸将】

○…映画の公式応援歌「あなたに逢えて」を歌唱した松原健之(42)が、同曲を含む2曲を熱唱した。劇中で医師も演じたが「ドキドキして公開当日、見に行ったら2秒くらい」と振り返り、笑った。阪本監督は「2秒ってことはないと思うんですけど」と苦笑した。

◆「北のカナリアたち」 湊かなえ氏の「往復書簡」に収められた「二十年後の宿題」が原案。日本最北の島にある麗端小学校岬分校の教師、川島はる(吉永)と生徒6人の間で悲劇的な事故が起きた。はるは夫を亡くして島を追われ「天使の歌声」を持つ6人の生徒も罪の意識を抱えて生きていた。20年後、都内の図書館で司書をしていたはるは、教え子の鈴木信人(森山未来)が事件を起こしたと知り、北海道へ渡り教え子を相次いで訪ねる。北海道を舞台にした04年「北の零年」、18年「北の桜守」と併せ「北の三部作」と呼ばれる。