鈴木亮平(37)が、20年に亡くなった故高山真さんの自伝的小説を映画化した「エゴイスト」に主演することが4日、分かった。

鈴木は、出版社でファッション誌の編集者として働く中、指導を受けるパーソナルトレーナーと、ひかれ合っていく浩輔を演じる。パーソナルトレーナーの龍太を、宮沢氷魚(28)が演じる。監督は15年「トイレのピエタ」や18年「ハナレイ・ベイ」などで知られる、松永大司監督(48)が務め、23年の公開を予定している。

鈴木が劇中で演じる浩輔は、まるで自分を守る、よろいのようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている。その中、自分の美しさに無頓着で、けなげな龍太との出会いによって、よろいを脱ぎ捨て、誰かを心から愛する喜びを知っていくという役どころだ。

浩輔は、大切な人との関係を断たれた時、この愛のかたちは自己満足なのではないか、彼らを追い詰めていたのではないか、愛とは自分を救うためのエゴなのか? と自問自答を始めることになる。前半の甘美な展開から一転、中盤以降は、浩輔が自らに向ける根源的な問いが物語の中心となっていく。

鈴木は「孤狼の血 LEVEL2」で悪魔のように非道な組長を演じ、昨年、国内の主要映画賞で軒並み助演男優賞を受賞した。「エゴイスト」では主演として、ひと味もふた味も違う姿を見せて新境地を開く。「『愛はエゴか、エゴが愛か』これは私が昔から考え続けてきたテーマでした。原作小説を初めて読んだ時、著者も同じテーマに向き合ってきた方なのではないかと感じました。この映画が静かに、皆様の心の深い場所へ届きますように」とコメントした。

宮沢は「『エゴイスト』という作品に出会い、僕は人間の本質、原点とはなんなのかを考えさせられました。愛とは一体なんなのか。無条件の愛など存在するのか。たくさん悩み、苦しみ、でも希望の光を目指してこの作品に挑みました。二人の人間の愛情と生き様をまるでドキュメンタリーのように描いた作品が完成しました。一人でも多くの人にこの作品が届くことを心より願っています」とコメントした。

松永監督は、トランスジェンダーである友人を撮影したドキュメンタリー「ピュ~ぴる」がデビュー作だっただけに、思いはひとしおだ。「自身の監督デビュー作品である『ピュ~ぴる』がジェンダーーをテーマにしていた自分にとって、著者である高山真さんの想いが込められた原作を読んだ際、とても心動かされるものがありました」とコメントした。

脚本執筆の際には、入念なリサーチを行い、主人公・浩輔のライフスタイルの細部までリアルに描写した。松永監督は「原作を鈴木亮平、宮沢氷魚らの人間味あふれる俳優たちと共に、力強い映画として完成させることが出来ました。。この作品が、ささやかでも誰かの生きる力になることを願います」とコメントした。原作「エゴイスト」の文庫版が8月5日に発売予定。

◆「エゴイスト」 14歳で母を失い、田舎町でありのままの自分を隠して鬱屈(うっくつ)とした思春期を過ごした浩輔(鈴木)。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢)。引かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし2人でドライブに出かける約束をしていたある日、何故か龍太は姿を現さなかった。