かつて人気を博した4人組バンド男闘呼組が、7月中旬のTBS系音楽特番「音楽の日 2022」に出演し、29年ぶりに再始動した。デビュー35周年の節目となる23年8月まで、期間限定で活動するという。今年の10月15、16日に東京・有明の東京ガーデンシアターで、それぞれ昼夜2公演を開催することも決まっている。メンバーはリードギター成田昭次(54)、ベース高橋和也、サイドギター岡本健一、キーボード前田耕陽(いずれも53)と当時と変わっていない。

実は29年前の93年9月17日付芸能面で、私が「男闘呼組 解散」をいち早く記事にした。メンバーの路線の違いが理由と書いた。朝から女性ファンの「ウソ書かないで!」という悲鳴にも似た抗議電話が会社に殺到した。中には「本当ですか…」と電話口で泣きだす子もいた。当時は読者広報室がなく、担当部署に直接電話が回ってきた。あまりの本数にデスクから「静まるまで電話の前に座っていろ。動くな!」と厳命されたことを覚えている。「解散」の2文字が、ファンにとっては強烈なインパクトだったのだろう。

最近は「解散」ではなく「活動休止」と表現する。事実上の解散であっても「無期限活動休止」としている。レコード会社や所属事務所もそう発表する。理由を音楽関係者は「例えばバンドが解散して、各メンバーがソロ活動や別のバンドで技術的にも人間的にも成長して、あるいは会社員などで別世界を経験して、また一緒にやろうとなる。かつては売れることが目標だったが、純粋に音楽を楽しめるようになる。解散したからといって、自分たちの曲が、足跡が、そしてファンが消えてなくなるわけではない。だから最初から『活動休止』と言うようになった。実際は解散だったとしても、将来の復活が絶対にないわけではない。活動休止でもファンは驚くが復活を期待してくれるし、その余地を残しておける」と話した。

確かに男闘呼組もそうだ。4人とも音楽だけでなく、映画や舞台で俳優として活動し、それぞれが成長して来た。岡本は舞台俳優の実績が評価され、今年4月に紫綬褒章を受章した。

再始動の際にリーダーの前田は「突然の活動停止に戸惑いながらずっと僕らの再活動を待ってくれていたファンの方々!メンバーそれぞれ違う道を歩きながらも、やはり原点はここにあったんだというステージを作りたいと思います。大人になった僕たちを感じに来ていただけたら」とコメントした。成田も「いくつになろうとも、挫折があろうとも、社会や家族に責任を持ちながら、夢を追うことができるのだと、僕らを見て感じていただければ幸いです」とコメントした。

かつて「解散」と断定的に書けなければ、スクープではないと思っていた。今は「少し休んで、またみんなで楽しませて」という気持ちになった。それでいいのだ、と思う。【笹森文彦】