河瀬直美監督(53)が10日、放送倫理・番組向上機構(BPO)がNHK BS1で昨年12月に放送された「河瀬直美が見つめた東京五輪」に重大な放送倫理違反があったと前日9日に判断したことを受け、声明文を発表。「公共放送であるという自覚と意識を再確認し、大きな影響力があるテレビ放送というものに携わるあらゆる立場の方々が、より真摯に番組制作をして頂くことを、切に願います」と意識改革を促した。

同番組で、NHKは河瀬監督の教え子に密着、同氏が取材した「デモは全部、上の人がやるから書いたやつを言った後に言うだけ」などと語った男性に「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕をつけた。ただ男性は2時間のインタビューで五輪反対デモに関心がなく行ったこともないと明言。発言は別のデモでの体験談だったが、NHKは五輪反対デモの体験を語っているかのように編集。ディレクターは男性が会話の中で五輪反対デモに行く予定はあると語ったことを放送内容の根拠だと説明も、男性にデモに参加したことを確認しなかった。

放送後、河瀬監督本人への批判が高まり、半年後の6月公開の東京五輪公式記録映画「東京2020 SIDE:A/B」も、公開前から反対派が公開差し止めを求める運動などを展開。興行的には不振に終わった。BPOは公式記録映画についてはコメントする立場でないとしたものの「放送後、SNSから火が付きNHKが放送した以上、事実だろうと捉えられた前提で論評されたのは否定できず、誤った印象を与える結果になった」と指摘した。