世界3大映画祭の1つ、第76回カンヌ映画祭(5月16日開幕)のラインアップが13日、フランスで発表された。

北野武監督(76)6年ぶりの新作となる映画「首」が、同映画祭で21年に設立された部門「カンヌ・プレミア」に出品されることが決まった。日本人監督の作品の出品は初めて。

「カンヌ・プレミア」は、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門では、まかないきれない良作、具体的には、より世界の歴史・民族・風土・生活習慣・信仰など現代社会を取り巻くテーマを描くワールドシネマにフォーカスした作品が選ばれる部門。映画祭ディレクターのティエリー・フレモー氏は、新人&ベテランの監督作に関わらず独自で特異な作品群が選考される「ある視点部門」を引き合いに「『ある視点』部門のテーマをより明確にする意味でも『カンヌ・プレミア』部門が設立された」と意図を説明した。

「首」は、北野監督が19年12月に出版した、初の歴史長編小説を映画化した。羽柴秀吉と千利休に雇われ、謀反人と逃げ延びた敵を捜す旅をしていた曾呂利新左衛門が、反旗を翻した織田信長から狙われ、有岡城から逃走する荒木村重を偶然、捕らえ、その身柄を利休に託す。一方、丹波篠山の農民・茂助は、播磨へ向かう秀吉の軍勢を目撃し、戦で功を立てようと雑兵に紛れ込むが、思わぬ敵の襲撃が、その運命を狂わせていく。信長、秀吉、明智光秀、徳川家康を巻き込み、首を巡る戦国の饗宴が始まる、本能寺の変をテーマに描いた書き下ろし歴史長編だ。

北野監督は、世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭(イタリア)と縁が深く、1997年(平9)に「HANA-BI」で最高賞金獅子賞、03年には「座頭市」で銀獅子賞を受賞。17年には前作「アウトレイジ 最終章」は同映画祭のクロージング作品に選ばれた。

一方、カンヌ映画祭では93年に「ソナチネ」が、ある視点部門、99年の「菊次郎の夏」、10年の「アウトレイジ」がコンペティション部門に出品。また07年に、同映画祭が53人の監督に制限時間3分で映画館をテーマに製作を依頼した「素晴らしき休日」が上映された。