賃上げや福利厚生の改善を求めて今月初めにストライキを実施した米カリフォルニア州ロサンゼルス地域のホテルで客室係を担当する従業員数千人を代表する労働組合が、米歌手テイラー・スウィフト(33)に8月3日から6夜連続で行われるロサンゼルス公演を延期するよう求めている。ロサンゼルス郡とオレンジ郡の60以上の主要ホテルで働く1万5000人を代表する労組ユナイト・ヒア・ローカル11は、ロサンゼルス・タイムズ紙でスウィフトへ宛てた公開書簡を発表。「私たちはベッドを整え、バスルームを掃除し、ゲストのあらゆるニーズに対応しています。あなたのショーは、私たちのホテルにたくさんの利益をもたらせます」と前置きした上で、ホテルの宿泊料金はスウィフトの公演によって通常の2~3倍の値段に高騰し、さらに無駄な手数料も加算して請求しているものの、自分たち従業員にはその恩恵は一切ないと指摘。「私たちが求めている公平な賃金」の支払いに雇用主が同意するまで、ロサンゼルスでの公演を延期して欲しいと訴えている。

スウィフトは今年3月17日から米国内20都市で52公演を行う約5年ぶりとなる大規模ツアー「The Eras Tour」を実施しており、各地でチケットは完売。今年最も人気のあるツアーになっており、開催地域に莫大(ばくだい)な経済効果をもたらしていることが伝えられている。米ハリウッド・レポーター誌によると、スウィフトのツアーは50億ドルもの経済効果を生み出す可能性があるとの調査結果も出ているという。シカゴで3日間行われた公演では、毎晩4万4000室のホテルがほぼ満室となり、同市のホテル業界における週末の収益で史上最高となる3900万ドルを稼いだと伝えられている。

SoFiスタジアムで行われるロサンゼルス公演を前に、オンライン予約サイトでは公演期間中のホテル料金は38%の値上がりになっているとロサンゼルス・タイムズ紙は伝えている。

ロサンゼルスでは、全米脚本家組合と全米俳優組合も63年ぶりとなるストライキを実施しており、ホテルの従業員も加わって各地で抗議デモが行われている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)