浜田光夫(79)が10日、東京・新文芸坐で行われた、戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭で上映された映画「零戦黒雲一家」(舛田利雄監督)上映後のトークショーに登壇した。

「零戦黒雲一家」は、終戦の記憶も色あせない1962年(昭37)8月12日に公開された、石原裕次郎さんの主演映画。南太平洋ソロモン諸島のひとつ、バルテ島を舞台に、同島の分遺航空隊隊長として単身、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)で赴任した谷村雁海軍飛行中尉が、島にいたならず者隊員だらけの隊を教育し、引き連れて米軍と戦う、航空アクションが印象的な戦争映画だ。谷村雁を裕次郎さん、二谷英明さんが海軍上等飛行兵曹・八雲甲三を演じた。主題歌「黒いシャッポの歌」も、裕次郎さんが歌唱し「ラバウル小唄」とともにリリースされた。

前年の61年に日活に入社した浜田は劇中で、若き海軍飛行予科練習生の二飛曹・中北次郎(通称ヨカレン)を演じた。当時、日大芸術学部に在学中の18歳で、出演した俳優の中では最年少だった。

撮影は、現在は宇宙センターで有名な種子島で行われた。浜田は「種子島で波打ち際に滑走路を作って、1カ月ほどロケーションして撮ったんです。民宿があって、裕次郎さんと二谷さんと私らで分散して泊まって。ロケットの打ち上げも行われていますが、そんなものはなく平和な島でした」と撮影を振り返った。裕次郎さんについては「やっぱり、格好いい。裕ちゃん、裕次郎さんあっての一家。私より9つ上で。背が高いし、格好良かったですよ」と、笑顔で現在も続く憧れを口にした。

劇中では、渡辺美佐子(90)演じるバルテ島に漂着した女・平岩奈美が慰安婦であり、島に流れ着いたことで二谷さん演じるかつての恋人・八雲と再会できたシーンも描かれた。エンターテインメント色のある戦争アクション映画でありながら、戦争の生々しさ、悲惨さ、理不尽さが物語の中に織り込まれた。

物語は、裕次郎さん演じる谷村隊長が八雲とともに島に残り、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に乗って米軍に戦いを挑む中で、八雲が「お互い、戦争のない世の中に生まれましょうや」と語りかけるシーンで終幕に向かっていく。浜田は「(製作・公開は)終戦から間がないわけですから、娯楽映画であっても、エンドマークのところで『戦争のないところで会えるように』って言う。裕次郎さんが『おぉ』と言った。懐かしい」と振り返った。

小学6年生で児童劇団「東童」に入り、子役として俳優人生をスタートした浜田は、現在も俳優として活躍している。9月3日には埼玉県上尾市文化センターで上演される舞台「生きる」に出演する。14年に東京・俳優座劇場で上演したのがスタートで「ボチボチですが…長いんですよ。母が認知症になって、やむにやまれず、あやめてしまうという話で、私は人情味あふれる裁判官役をやっています」と舞台をPRした。【村上幸将】