ジャニーズ事務所は2日、創業者ジャニー喜多川氏(19年死去)の性加害問題をめぐり、都内で会見を開き、将来的に廃業することを発表した。

今月17日付けで事務所の社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、マネジメントや育成業務からは完全に撤退。性加害の被害者補償が終わり次第、業務を終了する。タレントは新たに設立するエージェント会社とそれぞれ契約を結び、サポートを受けることになる。

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井ノ原快彦(47)がタレントのマネジメントなどを行う新会社の副社長に就任することを会見内で発表した。ジャニーズ事務所の東山紀之社長は年内で芸能界を引退するが、井ノ原はタレント業の続行を表明。会見では質問権を巡って紛糾する報道陣を柔らかに制し、存在感を発揮した。

井ノ原は現在、ジャニーズJr.の育成や発掘を手がけるグループ会社「株式会社ジャニーズアイランド」社長を務めるが、新会社でも副社長として同業務を担当する意向を示した。井ノ原は「副社長として東山社長を支えながら、彼ら(ジャニーズJr.)と共にしていく」とし、「(設立する)エージェント会社に来てくれる仲間たちがいるのであれば、彼らを担当する副社長だと思ってくれるとうれしい」。ジャニー氏が主に単独で行ってきた育成スタイルとは異なることを強調し、「周りに大人たちがいますし、女性もいる。いろんな目で成長を見守っている」と説明した。

また芸能界やタレントの事情をよく知る立場として「どうやったら彼らを守っていけるのか、知っていて発信できる人間がいてもいいのでは」と役割を語り、自身の今後についても「タレントを辞めるつもりはありません」と語った。

緊張感が漂う中、井ノ原の穏やかな人柄が随所ににじんだ。会見開始前には「1社1問で」「指名を受けてから質問を」などとルールが示されたが、一方的に声を上げて質問する一部の記者や、それに苦言を呈する報道陣の怒号が飛び交った。井ノ原は「落ち着いていきましょう」「皆さん冷静に」と場の混乱を収めつつ、質問を繰り返す記者に「さっきご質問されたのを聞いちゃったんですけど…」と申し訳なさそうに指摘するシーンもあった。また「この会見は生放送で全国に伝わっているし、子供たちも見ている。被害者の皆さんには、自分たちのことでこんなにもめているんだと見せたくない。ルールを守る大人たちの姿を見せたい。どうか、どうか落ち着いてお願いします」と切実に訴え、会場に拍手を起こしていた。

◆9月7日会見での井ノ原 ジュリー氏や新社長の東山らと登壇。司会者に回答の順番を飛ばされそうになった際に「僕(の答えが)まだです」などとマイクを手に取って話したり、すでに次の質問をしようとしていた人に対しても「僕の答えのあと、こちらの方でお願いします」とていねいに対応した。被害者が相談できなかったことについて「得体(えたい)の知れない触れてはいけない空気があった」。ジャニーズアイランド社長として「僕は性加害はしないけど、権力を持ってしまうかもしれない。気をつけている」などと誠実な回答を重ねた。穏やかな印象を与えた丸メガネもSNSで話題となった。

 

◆井ノ原快彦(いのはら・よしひこ)1976年(昭51)5月17日、東京都生まれ。88年、ジャニーズ事務所入り。95年、V6としてCDデビュー。06年からテレビ朝日系ドラマ「警視庁捜査一課9係」に出演し、後継番組「特捜9」では主演を務める。10~18年、NHK「あさイチ」司会。15年からテレビ東京系「出没!アド街ック天国」の2代目司会。同年、NHK紅白歌合戦で白組司会。昨年ジャニーズ事務所の子会社「ジャニーズアイランド」社長に就任。妻の瀬戸朝香との間に2児がいる。175センチ、血液型A。愛称「イノッチ」。