北大西洋で沈没した豪華客船タイタニック号の残骸を見学するツアー中に圧壊し、乗客乗員5人全員が亡くなった潜水艇タイタン号の事故から3カ月あまりで、全世界が注目した悲劇が早くも映画化されることが分かった。

ホラーコメディー映画「ザ・ブラックニング」(22年)のプロデューサー、E・ブライアン・ドビンス氏が、マインドライオット・エンターテインメントと組み、行方不明となった潜水艇の5日間に渡る捜索活動を題材にした作品を制作すると欧米メディアが報じている。

オンラインメディアのデッドラインによると、「サルベージド(海難救助、沈没船の引き揚げの意味)」の仮タイトルで現在制作が進められているという。現時点で具体的なあらすじの詳細やキャストは明らかにされていないが、捜索活動だけでなく、事故の前後も含めた内容になると伝えている。

オーシャンゲート社が運航する潜水艇タイタン号は、6月18日に乗客乗員合わせて5人を乗せたまま消息不明となり、4日後に潜水艇の破片の一部が海底で発見されたことから水圧によって圧壊し、5人全員の生存は絶望的だと発表された。このタイタン号の事故を巡っては、映画「タイタニック」(97年)でメガホンを取ったジェームズ・キャメロン監督が映画化を準備中との報道もあったが、「不快なもの」だと語り、自身が関与することはないとX(旧ツイッター)で否定していた。

英ガーディアン紙によると、マインドライオット・エンターテインメントは、潜水艇を開発したオーシャンゲート社の元ミッションディレクターであるカイル・ビンガム氏のドキュメンタリーシリーズも制作しているという。同社の欧州コンテンツ責任者ジャスティン・マクレガー氏は、「タイタン号の悲劇は、1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故をほうふつさせる。これは決して忘れられない悲劇」とコメント。打ち上げから73秒後に空中分解して7人の乗員全員が死亡した事故を引き合いに、映画化の妥当性について言及している。

この事故でオーシャンゲート社のストックトン・ラッシュCEOをはじめ、キャメロン監督の友人でもある仏探索家ポール=アンリ・ナルジョレットさんらが犠牲になっており、事故からわずか数カ月での映画化に「早すぎる」「ドキュメンタリーですら早すぎるのに、映画化は時期尚早」などネットでは批判の声が相次いでいる。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)