“憧れ”を力に変える。7人組女性アイドルグループ、FRUITS ZIPPERの櫻井優衣(23)がファースト写真集「YUi」(光文社)を20日に発売する。

タイ・プーケットなどで撮影し、水着姿のほか、ビーチで象とふれあう様子や初ランジェリーカットにも挑戦した。グループは昨年の第65回日本レコード大賞で最優秀新人賞を獲得し、個人では“アイドルが憧れるアイドル”としても人気上昇中。このほど、作品の見どころやこだわりのアイドル哲学を聞いた。【聞き手=松尾幸之介】

   ◇   ◇   ◇

ファン待望の1冊は、すでに発売前重版が決定した。東南アジア有数のリゾート地では「幻のビーチ」として知られるピピ島のマヤベイも訪問。「女の子でも見やすいようにファッション誌のような雰囲気の写真や、普段の活動ではあまり見えない素の部分が出ているカットを多めに選びました。『櫻井優衣』という人にフォーカスを当てた、内面もわかるような写真集になったと思います」と語るこだわりの一作だ。

初挑戦のランジェリーカットは「ただ寝ていただけ。のんびりしているところを撮られました」と笑顔で振り返った。撮影へ向けては「女性らしくみせるために」と体重を数キロ増やして臨んだ。

「決めの顔はアイドルでもやってきたので、今回は自然に撮っていただけるような練習もしてきました。利き顔じゃない方でも撮っていただいたり、写真を見ると自分も知らない表情もあったりしたので、うれしかったですね」

まだ23歳ながらアイドル生活は10年目。グループに所属するのは今回で5つ目となる。コロナ禍などで活動が思うように進まない時もあり、悩んでいた時期に現事務所関係者と出会い、結成へ向けて動いていたFRUITS ZIPPER加入が決まった。

「どのグループでも全力でやっていて思い入れも強かったですけど、うまくいかない時もありましたね。今のグループでは過去の自分は捨ててやっていくという覚悟を決めています。才能あるメンバーも多くて、全員がセンターとして上がっていけるなと感じていますし、自分ができない部分はメンバーがカバーしてくれて、頼れているところは大きいです」

グループはセカンドシングル「私の一番かわいいところ」がTikTokで9億回以上再生されるなどしてブレークし、昨年の日本レコード大賞の最優秀新人賞にまでつながった。個人では昨年6月放送のフジテレビ系「ねる、取材行ってきます~TOKYOアイドルタイムズ~」内で調査された、現役アイドルが選ぶ「とにかくカワイイと思うアイドルランキング」で1位も獲得。フェスなどでは櫻井と写真を撮りたいアイドルの列ができるほどで「楽屋を出てケータリングを取りに行った時とかに声をかけられたりすることが多くなりました。うれしいですね。そうやって声をかけてくださるのであれば私も一緒に撮りたい」と笑顔をみせた。

“アイドルが憧れるアイドル”を目指すことは目標のひとつでもあった。活動初期の頃、グループのプロデューサーを務める木村ミサ氏に自身の方針などについて相談すると「そのままでいいんだよ。アイドルの子に憧れられるアイドルを目指してみたら」と声をかけられたという。

「ミサさんにそう言っていただけたことで覚悟を決めて活動していました。なので、今(周囲で)そう言っていただけるようになってミサさんに対してもよかったなと思っていますし、プレッシャーではありますけど、うれしいなと感じています」

悩みがないわけではない。他グループのアイドルたちから私物などの質問を受けることも増えたという。

「去年の夏くらいまではまだ自覚も薄くて300円のイヤリングをしていたりしたんですけど、聞かれた時に値段を答えたら女の子がドン引きしていて(笑い)。あ、もうダメなんだなと。それからは憧れるって何だろうって考えるようになって、アクセサリーやお洋服もいろいろ見るようになりました」

荷物も「紙袋とか自分たちのグッズのバックに入れていた」というが、思い切って憧れのブランドバッグを購入。「自己投資もしながら努力しようと思っていて、今も頑張っています。注目されることは全然、苦ではないですし、私もプロのアイドルに憧れているので、向き合わないといけない。今までは後押ししてくれる存在がいなかったですが、ファンの方やスタッフさんに声をかけてもらえるようになったので、今は楽しんでもっと頑張れています」と力を込めた。

ステージでのこだわりもある。

「私自身もステージでキラキラしているアイドルが好きですし、心から楽しみながら人に元気を与えている人に見ている人はときめくのだと思っています。なので、私も常に一番楽しそうに、どこにいても、どの瞬間でも楽しんでいる姿を見ている人に見せてあげたい。そこには気をつけています」

昨年2月発表の楽曲「ハピチョコ」では、自身のパートで歌うフレーズ「なぁになぁに?(※歌詞では『なになに?』表記)」が流行し、TikTokでは派生語「なぁぜなぁぜ?」にもなって大ブームに。今では同楽曲披露時は「『なぁになぁに』待ち」とも言える雰囲気が会場に漂うようにもなった。

「私自身は毎回『なぁになぁに』をどんな感じで言うとかは決めていなくて、毎回その時のお客さんの反応を見て決めています。今は待たれているので、どこに行ってやろうかな~という感じにはなっていますね(笑い)」

アイドル10年目でやってきた波に、しっかりと乗ることができている。優しい笑顔と確かなパフォーマンスは天性のものにも感じるが、関係者によると自主練習などへのモチベーションも高く、SNS投稿にも余念がない努力家の一面もある。

「たまに『天才だ』とかって言われることもあるんですけど、そんなことはないですし、実際は何もできないので、しんどく感じることもあります。でも、何事もできるようになるまでやるというのは昔からやっていたかもしれなくて、今はかけていただいている言葉のレベルが高いですし、求められていることのスピード感が変わってきています。マイペースだったのが急ピッチで行動できるようになったのは今のグループに入ってからかもしれないですね。気づいたことがあったら何かをやる。気になったらやってみる。性格的に何事も何かしら頑張っている時が好きですし、簡単に無理とは思わないこと。やらないから無理なんだと思うようにはしています。ファンの方が応援してくれているから、頑張れているんです。今までの10年間も全部出さなきゃなとも思っているので、今できなかったらいつまでもできないと思いますし、やりたいという気持ちの表現として努力しようと思っています」

ミレニアムベイビーとして生まれ、2月21日で年女の24歳を迎える。今後もアイドルを基盤として活動していく気持ちは強い。

「演技のお仕事に興味があったり、新しい挑戦とかはあるかもしれないですけど、人を幸せにできる仕事はやっぱりアイドルだなと思っています。私にとっても夢物語のような期間でもありますし、おばあちゃんになっても『アイドルだね』と言われるくらいの存在で居続けられるように頑張りたいですね」

◆櫻井優衣(さくらい・ゆい)2000年(平12)2月21日、東京都出身。小学生の頃からAKB48や鈴木愛理(当時℃-ute)らアイドルに憧れ、中学生の頃から自身もアイドル活動を始める。高校時は一時ソロとなり、カフェやカラオケ店などでのアルバイトも経験。22年2月にFRUITS ZIPPER加入。ネイリスト技能検定3級、ジェルネイル検定初級の資格を持つ。趣味は紅茶、ラーメンめぐり、メーク研究。身長157センチ。