俳優谷啓さん(享年78)とはクレージーキャッツの仲間だった俳優犬塚弘(81)が11日、50年以上も活動をともにした「戦友」の突然の死に泣いた。「大切な友が突然、消えてしまった。ショックだし、寂しい」と涙ながらに思い出を話した。

 犬塚は谷さんの死から数時間後に訃報(ふほう)を知った。

 「先ほど、谷のマネジャーから連絡を受けた。大切な友が突然、消えてしまった。ショックで寂しい。谷とは相性が良かったし、互いに酒が飲めないこともあって、黙っていても気が合った。地方公演でみんなが遊びに出掛けても、2人で部屋に残って自然でいられた。よく動物園に行っては動物をからかったりした。あうんの関係だった」。

 谷さんは恥ずかしがり屋だった。ペギー葉山のマネジャーだった妻和子さんになかなかプロポーズできず、業を煮やした和子さんの方からプロポーズしたという。

 「引っ込み思案の方だった。出しゃばらないし、自慢話もせず。目立たないように振る舞う人。優しくて周囲に気を使い、いつも静かに楽しませてくれた」。

 最後に会ったのは昨年初め。谷さんが案内役を務めたNHK教育「美の壺」にゲスト出演した時だった。

 「普段と変わらない感じで、『どう?』と聞いたら『大丈夫だよ』と言っていた。まさかこんなに早く逝ってしまうとは思わなかった。谷と会うと、いつも互いに顔を指さして『うんっ』と聞くと『うんっ』と答えた。このしぐさで『元気か』『良かったな』というあいさつになっていた。言葉に出さなくても、すべてを分かり合えた」。

 仕事を離れてもいい仲間だった。いたずらっ子だった谷さんは大好きなホラーもののマスクをかぶってクレージーの仲間を驚かした。みんなの前でトランクを開けると、中に1000円札の束でぎっしり詰まっていたが、もちろん本物は上の1枚だけで、あとは新聞紙。驚かせようと前日から準備していたという。

 「よく仕事が終わると離れ離れになるお笑いコンビがいるけど、クレージーは仕事が終わってから、みんなで集まって騒いでいた。本当に仲が良かった。今ごろは天国でハナ(肇)や植木(等)と会って、互いの顔を指さし合っている姿が目に浮かぶよ。今日は谷の家の方角に手を合わせて冥福を祈ります」。

 [2010年9月12日8時35分

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