昨年、ユネスコの「食文化創造都市/シティ・オブ・ガストロノミー」に認定されたマカオ。2018年は「マカオ美食年」と銘打ち、さまざまな食のイベントが開催されています。マカオの食がこれほどまでに注目される理由は、おいしさや店舗の多さだけでなく、他の街にはない独特の背景。歴史をちょっとひもとくと、マカオ料理はますますおいしくなります。【取材・構成 芹沢和美】

ポルトガルの国民食 タラの身の塩漬け「バカリャウ」

バカリャウのグリル、ローストポテト添え
バカリャウのグリル、ローストポテト添え

 マカオを旅する人の多くが、滞在中に一度は口にするものといえば、タラの身を塩漬けにして乾燥させた「バカリャウ」。かつての宗主国ポルトガルの国民食バカリャウは、マカオでもおなじみの食材だ。

 コロッケに炒め物にグラタンにグリル…。そのレシピは365日分あると言われるほど、メニューもバラエティーに富んでいる。今でこそ身近なバカリャウだが、これがなければ、マカオの歴史は変わっていたかもしれない。

大航海支えた保存食 帆船の船底に積みマカオへ入港

バカリャウの温野菜添え
バカリャウの温野菜添え

 ときは15世紀末、冒険家のバーソロミュー・ディアスが喜望峰に達し、ポルトガルが本格的な大航海時代を迎えていたころ。カナダの東にあるニューファウンドランド島に到着したポルトガル船の船員たちが、現地の漁民から教わったのが、油が少なく長期保存ができるタラの塩漬け、つまりバカリャウだったという説がある。

 長い長い航海を可能にする保存食バカリャウは、さぞかし、船乗りたちを喜ばせたことだろう。帆船で外洋に出ていた時代、船底に何かを大量に積み込み船のバランスをとるのは、安全な航海に欠かせないことでもあった。ポルトガルを出港した際、船底に積んでいたポートワインがイギリスで出荷され、代わりにカナダで新鮮なタラを積んだとも。当時のエピソードには諸説があるが、このバカリャウがあったからこそ、大航海が可能になり、ポルトガルの船がマカオに到達できたともいえる。東西が入り交ざるマカオならではの独特で美しい風景は、バカリャウのおかげで生まれた…と考えてみるのも、ロマンがあって楽しい。

 ちなみに、バカリャウはマカオでは、「馬介休(マーガーイヤウ)」と呼ばれている。ポルトガル語の発音をあて字にした広東語だ。定番は、コロッケの「パステル・デ・バカリャウ」、グラタンの「バカリャウ・コン・ナタシュ」など。その味に秘められた壮大な歴史に想いをめぐらせながら食べれば、よりいっそう味わい深くなるはず。マカオで育まれた料理は、決しておいしいだけではないのだ。