広東料理の定番調味料といえば、オイスターソース。カキの煮汁をベースにした調味料で、多くのメーカーが独自の味を競っています。広東地方だけでなく中華圏で広く使われ、最近は日本でも知られるようになったこの調味料の故郷は、マカオ。小さな港町でオイスターソースの製造販売が始まった1902年から、中国料理に新しい味覚が加わったのです。【取材・構成 芹沢和美】
広東料理に欠かせない調味料 故郷は「内港エリア」
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- 「李錦記」では多くのオイスターソースが販売され、お土産にもおすすめ(芹沢和美提供)
広東料理はマカオを代表する料理のひとつ。「アジアのベスト・レストラン50」に選出された「ジェード・ドラゴン」(シティ・オブ・ドリームズ内)から街中の小さな食堂にいたるまで、さまざまなスタイルの広東料理店がある。どの店にもあるものが、オイスターソース。炒め物や煮物、隠し味にと幅広く使われている。
中心地のセナド広場からメイン通りを10分ほど歩くと、乾物店や海鮮料理店が並ぶ内港エリアにたどり着く。この場所こそ、オイスターソースの故郷だ。
1902年から製造販売 中華調味料メーカー最大手へ
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- オイスターソースを使った料理の数々(芹沢和美提供)
1888年のある日、広東省の小さな村で食堂を営む李錦裳は、常連客の船員からたくさんの新鮮な生ガキを土産にもらった。新鮮な生ガキを塩ゆでにしようと、彼はそれを鍋に仕込んだものの、あまりの忙しさに、ゆでたカキを鍋に入れたまま一晩置いてしまう。翌日、鍋を開けてみると、いい香りの汁ができている。なめてみるとなんとも香ばしい。これを料理に応用できないだろかと、小麦粉や砂糖、うまみ調味料を入れて、試行錯誤のすえ完成したのが、オイスターソースの原型だという。
1902年、李錦裳は広東省に隣接するカキの大産地マカオへと店を移し、本格的にオイスターソース作りを始めた。これが、後に中華調味料メーカー最大手となる「李錦記」だ。販売を始めたとたん、料理に深みを与える便利なソースは大ヒット。瞬く間にマカオから香港、中国へと普及し、広東料理になくてはならない中華調味料となった。その後、店はさらに販路を拡大すべく香港に拠点を移したが、今もマカオには、記念すべき1号店が残る。
マカオで食べる広東料理には、「蠣油火腩豆腐(豚バラ肉と豆腐のオイスターソース煮込み)」や「蠣油鶏翼(鶏手羽先のオイスターソース煮込み)」、「蠣油菜(野菜のオイスターソース炒め)」など、蠣油(オイスターソース)の名がつく料理は数え切れないほどある。ときには、隠し味として西洋料理や和食に使われていることも。
広東料理の枠を超え、各国の料理に重宝されるオイスターソース。このミラクルな調味料は、東西文化が入り交ざるマカオに、どこか似ている。

