将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(17)が渡辺明王将(棋王・棋聖=35)への挑戦権獲得に向け、好スタートを切った。

30日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ1回戦で、三浦弘行九段(45)を下した。初進出のタイトル戦挑決リーグ初戦を白星で飾った。次週10月7日には、同リーグで豊島将之名人(29)と対戦する。

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ラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表のように、藤井が巧みな試合運びを見せた。自陣で金銀を相手の攻め駒に当ててタックルし、反撃に転じる。モールやラックで球を支配しながら連続攻撃するかのように、仕掛け続ける。「中盤、指すのが難しかった」と振り返るが、混戦を抜け出して投了に追い込む。「認定トライ」ならぬ白星をつかみ取った。

96年に羽生善治7冠から棋聖を奪った三浦は「うまくバランスを取りながら踏み込まれた」と脱帽。三浦は今年8月の「将棋日本シリーズ 第40回JTプロ公式戦」(福岡市)で初対局し完敗した相手で、藤井は「読み負けないように戦った」と喜びをかみしめた。

日本将棋連盟によると、このリーグの白星最年少記録は、藤井のデビュー戦の相手だった加藤一二三・九段(引退)が1956年(昭31)9月に花村元司九段(故人)を下した時の16歳8カ月。藤井はこれに次いだ。

王将戦挑決リーグは、7人総当たり。今期は両者のほか、久保利明九段(44)糸谷哲郎八段(30)広瀬章人竜王(32)豊島将之名人(29)羽生善治九段(49)と、藤井を除く6人はタイトル獲得経験者という強敵ばかりがひしめく。

次は、過去3連敗の豊島名人と戦う。「速いペースで対局が続く。気を引き締めて頑張りたい」。屋敷伸之現九段(47)が持つ、17歳10カ月でのタイトル初挑戦の最年少記録を更新を目指し、試練の勝負が続く。【赤塚辰浩】