映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)の製作会社スターサンズが、助成金交付内定後に下された不交付決定の行政処分の取り消しを求め文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)を訴えた裁判の第1回口頭弁論が25日、東京地裁で開かれた。

芸文振は19年7月に送った助成金不交付決定通知書で、不交付の理由として麻薬取締法違反罪に問われ有罪が確定したピエール瀧の出演が「公益性の観点から適当ではない」とした。被告側代理人は欠席したが、請求棄却を求めている。

原告側は意見陳述で、補助金の交付について定めた補助金適正化法や関連する法律の文言に「公益」「公益性」といった文言はなく同法に違反しており違法だと訴えた。昨今、政権への批判が高まる「桜を見る会」をめぐる公文書の破棄問題、検察庁法違反が指摘される東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年延長問題などを引き合いに「日本が法治国家として何とか踏みとどまることを希望の裁判所に託す訴訟」と訴えた。

弁護団の伊藤真弁護士は「表現の不自由という空気感がまん延すると、政治を批判する空気も萎縮しがちで危険。この国の民主主義のありようから問題提起しなければならない」と訴えた。第2回口頭弁論は5月12日に開かれる。【村上幸将】

◆「宮本から君へ」裁判の経緯 新井英樹氏の漫画を原作に、18年にテレビ東京系で連続ドラマ化され映画化。本編が完成した19年3月12日に、出演者のピエール瀧がコカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕。製作側には、同29日に助成金交付内定の通知があったが、同4月24日の試写後、芸文振から瀧の出演シーンの編集、再撮影の予定を問われ、その意思がないと返答。19年6月18日に瀧が懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けると、同28日に芸文振から不交付決定が口答で伝えられ、同7月10日付で不交付決定通知書が送られた。