藤井聡太2冠(棋聖・王位=18)が3日、大阪市の関西将棋会館で指された第6期叡王戦段位別予選C組の準決勝で、師匠の杉本昌隆八段(52)を73手で破り、決勝に進出した。将棋界では公式戦で弟子が師匠に勝つことを「恩返し」という。8月に2冠獲得後、藤井が師匠と対戦するのは初めて。通算3度目の師弟対決でも成長ぶりを示す「恩返し」を果たした。

午後7時から始まったナイター対局。関西将棋会館で最もグレードの高い「御上段(おんじょうだん)の間」。過去2度の師弟対決とは異なり、藤井は初めて上座に座った。杉本は戦型を得意の四間(しけん)飛車に構えた。全力で負かしに来た師匠に、藤井は、時間を使いながら、丹念に手を読んだ。終盤に入ると、藤井が厳しい手を連発。投了に追い込んだ。

終局後、藤井は「序盤から(師匠に)機敏に動かれ、うまく対応できないところがあった。そこは課題です」と振り返った。小学4年の夏に弟子入りしてから8年。その成長ぶりを示す3度目の「恩返し」だった。

杉本は「ちょっと分からなかったところがあった」と悔しそうに振り返った。それでも師匠の立場からは「わずか半年でタイトルを2つもとっている。成長を感じました」と話した。

タイトルホルダーの弟子への師匠の気づかいもあった。杉本は先に対局室に現れ、「間違っても(上座に)座らないように早めに来て荷物を置いていました」と話すと、藤井は「先に荷物を置かれてしまったので…」と苦笑いした。

叡王戦は将棋の8大タイトル戦の1つ。持ち時間各1時間の早指し戦。四段から九段までに分かれた段位別予選を行い、12人が予選を通過する。28人が参加する八段戦は3組あり、各組優勝者が本戦に進む。本戦はシード棋士4人を加えた16人で戦う。【松浦隆司】