エフフォーリア、ヴェラアズール、デアリングタクトなど、名だたるG1馬に出資してきたKAZFORIA氏が、出資馬を選択する上での着眼点を解説します。(毎週火曜日、木曜日更新予定)

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シルクホースクラブやキャロットクラブのカタログ末尾には、2021年から「募集馬の手術歴等について」とのページが新設されている。募集馬のマイナス面についても積極的に情報開示してくれる姿勢には、出資者としてとても好感が持てる。馬選びに際して、この手術歴についてはどう考えればいいのだろうか?

まず、関節の軟骨が剥離する「OCD」は、若駒に起きやすい症例で、早めに手術すれば育成が数カ月遅れるだけで、競走能力に影響はないとされている。キャロットクラブの愛馬ヴェラアズールも、OCD手術の影響もありデビューは3歳3月と遅れたが、5歳でオープン入りを果たし、ジャパンCを制覇してくれる大活躍をしてくれたこともあり、大きなマイナスとはとらえていない。

また骨折も、部位や折れ方が悪くない限り、通常手術や数カ月の休養で完治するので、馬選びでも致命傷とは考えていない。馬にとってより重い病とされているのは、屈腱炎(くっけんえん)や繋靭帯炎(けいじんたいえん)など腱や靭帯の炎症の方である。

またボーンシスト(骨嚢胞)という、骨に空洞が開いてしまう病気は問題である。治療に長期間を要することも多いし、良血馬でもこれに泣いた馬が何頭もいる。ただ、症状レベルの度合いにより、また治療技術の進歩で競走能力に影響はないという考え方もあるようだ。開腹手術も、馬にとって腸の病気はリスクになるため、慎重な検討が必要だろう。

次に、育成を進めていく中で生じる脚部不安もある。1次募集のカタログに記載されることはまずないが、追加募集時の近況コメントにはそのような記載もたまに見かける。このように脚元に不安の出ている馬については、以下のように考えている。

細い脚で大きな胴体を支えて、かなりの速度でトレーニングをする以上、サラブレッドにとって脚元の不安は付き物であり、軽度の脚部不安であればあまり気にしないようにしている。例えばソエ、骨瘤(こつりゅう)、飛節後腫(ひせつこうしゅ)と言った脚部の炎症や腫れ程度なら良くあることだし、重度でない限り数カ月の休養やトレーニングを控えることで完治することが多い。

ただ、脚部不安が重そうな馬は様子を見るようにしている。また、脚部に大きな不安がかかるデビュー想定馬体重が500キロ以上の馬や、兄姉が脚部不安で早期引退している馬に関しては、より慎重な検討が必要だろう。