3月に開業した嘉藤貴行調教師(40)が、日曜新潟メインの新潟2歳S(G3、芝1600メートル、28日)で初の重賞に挑む。送り出すバグラダス(牡、父マジェスティックウォリアー)は7月の福島ダート1150メートルを逃げ切り、厩舎に初めて新馬勝ちをもたらした。芝替わり、マイルへの距離延長とクリアすべき壁はあるが、騎手時代に取れなかったタイトル獲得に期待を膨らませている。

嘉藤師はすがすがしい笑顔がトレードマークだ。バグラダスで重賞初挑戦を控え、日に日に厩舎の雰囲気は盛り上がっている。「ありがたいことにここまで何個か勝たせていただいて、スタッフのモチベーションも上がっています。(重賞挑戦で)厩舎としてもっとレベルアップできると思います」。約6カ月で積み重ねたJRA7勝は、蛯名正師ら3月開業の新規調教師5人の中で最多になる。

昨年末に21年間の騎手生活に別れを告げた。今は馬上ではなく、管理馬を送り出す立場。レースでのドキドキ感が格段に増したという。「レース中は何もできないですからね。『この位置で大丈夫かな』とか、『この手応えで大丈夫なの』とか自分で乗っていたら分かるけど、それが分からないですからね」。騎手とは違う緊張感がある。

「楽しみのほうが大きい」と話すワクワク感は、バグラダスの中間の雰囲気からだ。「順調ですね。勝ってからイレ込みもないし、落ち着いています。すごく頭がよくて要求したことを覚えてくれます。センス、総合力が高い馬。(初の)条件もこなせると思います」と信頼する。

芝替わり、1600メートルへの距離延長は鍵。だが新馬戦の手綱を取った戸崎騎手(今回は三浦騎手の予定)はレース後、芝適性の可能性を口にしていた。師は「手足が軽いので(適性は)決めかねています。この時期はいろいろと試すことが、いい経験になる」と前向きだ。デビュー2連勝で最高の結果を出せば、未来は大きく広がる。【井上力心】

◆前走ダート戦からの新潟2歳S制覇 84年のグレード制導入以降、前身の新潟3歳S時代に2頭いる。88年の覇者マイネルムートはダート1200メートルの札幌3歳S6着から。93年の勝ち馬エクセレンスロビンはダート1000メートルの札幌新馬戦1着からのローテ。

◆嘉藤貴行(かとう・たかゆき)1981年(昭56)11月5日、東京都生まれ。00年3月に騎手デビュー。JRA通算5485戦157勝。調教師試験に合格した昨年、12月31日付で騎手引退。今年3月20日中山7Rのコスモコラッジョで調教師初勝利。