ハイレベルの3歳牝馬は、古馬を相手にしても頂点に立った! アストンマーチャン(牝3、栗東・石坂)が好スタートから後続に3/4馬身差をつけて逃げ切り快勝。悲願のG1タイトルをつかんだ。勝ち時計は1分9秒4。中舘騎手は94年エリザベス女王杯(ヒシアマゾン)以来、13年ぶりのG1制覇を果たした。2着に1番人気のサンアディユが入り、3着はアイルラヴァゲイン。高松宮記念の覇者スズカフェニックスは9着に敗れた。

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まっしぐらにゴールだけを目指した。好スタートを切ったアストンマーチャンが果敢にハナに立つと、2番手グループを引き離しながら軽快なラップを刻む。独特のピッチ走法は最後まで止まらない。2着に3/4馬身差をつける快勝劇。ピタリと内ラチ沿いを走り、最短コースを逃げ切った。騎乗した中舘騎手は「スタートが決まって1ハロン目をゆったりと(12秒0)行けた。瞬発力が生きる馬場じゃないし、セーフティリードを、と思っていた。(G1優勝は)13年ぶりで、大きいレースに勝つことを忘れていた」と感慨に浸った。

桜花賞後の陣営の判断が吉と出た。7着に敗退したクラシック1冠目。阪神競馬場でクールダウンしながら、春シーズンの全休を検討した。2400メートルのオークスではなくNHKマイルCへ向かうこともできた。それでも秋のスプリンターズSを第1目標に据えた。「オーナーと相談して、了承してもらえたから」(石坂師)。北九州記念からの始動も即決した。セントウルSからでは中2週でG1になる。暑さは覚悟の上で真夏の小倉へ向かった。レース間隔をあけることでテンションも押さえられた。ゲート前の輪乗り中に、中舘は武豊騎手に「落ち着いている。こういう時は走るんですよ」と声を掛けられた。じっくりと調整した成果は如実に表れていた。

セレクトセールで買い手がつかず、主取りとなった馬がスプリント界の頂点を極めた。桜花賞前にはウオッカ、ダイワスカーレットと合わせて3強と評された素質が開花。坂路で鍛えられるうちにメンタル面でも成長し、スプリンターズSを前にして坂路を2本上がれるようになっていた。石坂師は「今までで一番、落ち着いていた」と目を細める。プラス10キロの馬体重も成長の証し。好勝負できることは確信していた。

今後については未定。海外へも目を向けたくなるが「3歳牝馬でG1を勝ってくれたから」(石坂師)と無理をさせない方針が示唆されている。成長期にあるアストンマーチャンの快速には、まだまだ磨きがかかりそうだ。【高橋悟史】

◆アストンマーチャン▽父 アドマイヤコジーン▽母 ラスリングカプス(ウッドマン)▽牝3▽調教師 石坂正(栗東)▽馬主 戸佐真弓▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 9戦5勝▽総収得賞金 2億4899万7000円▽主な勝ちクラ 06年小倉2歳S(G3)ファンタジーS(G3)、07年フィリーズレビュー(G2)

(2007年10月1日付 日刊スポーツ紙面より)