愛に満ちた落札劇だ-。国内最大のセリ、「セレクトセール2024」の当歳部門が9日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。

この日唯一の上場となった新種牡馬マカヒキ産駒のデロングスターの24(牡)を、金子真人オーナー(名義は金子真人HD(株))が1億5000万円で落札した。16年ダービー馬の種付け料は50万円。かつて同馬を所有した金子オーナーがその300倍もの金額を投じ、希少産駒を競り落とした。(金額はすべて税抜き)

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どこかホッとしたような、穏やかな語り口だった。金子オーナーが新種牡馬マカヒキの子、デロングスターの24を1億5000万円で競り落とした。大種牡馬ディープインパクト、母ウィキウィキも自身の所有馬。その子どもとなる16年ダービー馬の産駒はこの日、唯一の上場だった。金子オーナーは「愛着のあるマカヒキの子で、注目していました。実際に馬を見ても上品だと思って、ますます人に譲りたくないと思いました」と思い入れの強さを語った。

夢と感動と、勇気を与えてきた馬だ。15年10月のデビューから22年8月まで約7年弱、9歳まで戦い続けた馬の初年度産駒。セリに立ち会った友道師は「デビュー前から身体能力はずばぬけていた。最後まで大きなけがをすることなく、ずっと頑張ってくれた」と現役時を振り返る。ダービーでサトノダイヤモンドと約8センチ差の接戦を制した後、3歳秋には凱旋門賞に挑戦(14着)。長らく雌伏の時を過ごしたが、8歳時の京都大賞典で5年1カ月ぶりの勝利を成し遂げた。不撓(ふとう)不屈のダービー馬だった。

現役時の高評価は産駒にも出た。昨年はエピファネイアの種付け料が1800万円、キズナとコントレイルが1200万円、キタサンブラックが1000万円だったのに対し、マカヒキの種付け料はわずか50万円。他の上場馬の種牡馬との比較で最も低い水準だったが、デロングスターの24はその300倍もの値段がついた。友道師は「下見所から見ていていい馬だな、と。マカヒキの当歳時は見たことないけど、シルエットに関しては面影がありますね」とコメント。血統馬がそろうセリでも、トップレベルの注目度を集めた。

青鹿毛の牡馬は時折、前肢をかき上げながら値段の上昇を壇上で聞いていた。リザーブ価格1800万円で始まったセリは、値上げの応酬が続くこと56回。レアな産駒を多くの人が欲した。友道師は「なんだか、ありがたいですよね」と自分事のように喜んだ。早ければデビューは2年後の26年夏。黒、青袖、黄鋸歯形の勝負服と、ターフを躍るように駆け抜ける。【松田直樹】

◆マカヒキ 同期の皐月賞馬はディーマジェスティ、菊花賞馬はサトノダイヤモンド。通算成績は28戦6勝で、主な勝ち鞍は16年弥生賞、ダービー、ニエル賞、21年京都大賞典。ラストランは22年札幌記念(16着)。レックススタッドでけい養され、種付け料は50万円。23年の種付け頭数は104頭。

▽現役時代にマカヒキの調教をつけていた友道厩舎の大江祐輔助手 (セールの)下見所から注目度が高くて評判が高かった馬だと思います。歩き姿に品があって、いい馬だと思います。シルエットとか、堂々としているところはマカヒキに似ていると思います。初年度で、セリに出てくる第一号。金子さんが落としたのも何かの縁でしょうね。