JRA坂井瑠星騎手(28=矢作)が、今年こその米ブリーダーズC制覇に挑戦する。BCクラシック(G1、ダート2000メートル、現地11月1日=デルマー)で騎乗する相棒はフォーエバーヤング(牡4、矢作)。昨年、3着に敗れた舞台で人馬待望の勝利に挑む。

日刊スポーツでは「世界へ瑠星 Off to the world」と題して、坂井騎手の世界挑戦を4回連載で追う。第3回は、父と描いてきた大舞台への思いを明かす。

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“坂井少年”は歴史的瞬間に立ち会っていた。11年3月26日、世界最高峰レースの1つ、ドバイワールドCをヴィクトワールピサが日本馬で初めて勝利した。その偉業を、当時中学2年生の坂井少年は現地で目の当たりにした。大井競馬の騎手だった父・英光氏(現調教師)が、けがのため戦列を離れていた時期で、家族旅行こそ直前に起きた東日本大震災で断念したが、ドバイワールドCデーを現地で見ようと、父と2人で訪れていた。

「初めての海外で、衝撃を受けました。日本馬でも勝てるんだと。スタンドの上の方で見ていて、あの映像は鮮明に覚えています。ここで勝ちたい。このレースを勝ちたいと一番はっきり思ったレースでした」

騎手を志したきっかけは父への憧れだった。JRAより先に南関東の競馬にのめり込み、小学生の時から南関東の所属馬すべてを把握するほど好きだった。父との会話は常に競馬。時には競走馬育成ゲームで、どちらが先に“BCクラシック”を勝つか、勝負もした。ジョッキー坂井瑠星のルーツは間違いなく父だ。

「当時は『なんでこう乗らないの』とか文句ばかり言ってましたが、今になってすごい騎手だったんだと改めて尊敬しました。今でも憧れです。父の管理馬で勝つことが1つの目標ですし、いつか海外に行けたら楽しいでしょうね」

幼少期に父とゲームで競ったBCクラシックが、昨年は現実となった。しかし、フォーエバーヤングで3着。悔しい思いをした。あの時、現地で父と見たドバイワールドCも今年、同馬と挑んで3着。勝てなかった。今度こそ-。

「アメリカといえばBCクラシック。そこに今年もまた挑戦できる。そんなチャンス、なかなかないですし、ありがたいです。ただ、ありがたいだけじゃなくて結果を出したい。その気持ちが強いです」

憧れの舞台に立つだけではなく、勝つ。強い気持ちで雪辱を期す。【藤本真育】

◆坂井瑠星(さかい・りゅうせい)1997年(平9)5月31日生まれ、東京都出身。16年3月に栗東・矢作厩舎所属で騎手デビュー。同4月2日阪神で初勝利。1年目は25勝を挙げ、中央競馬関西放送記者クラブ賞(関西所属騎手新人賞)を受賞。2年目は36勝と勝ち星を伸ばしながら秋にオーストラリアへ渡った。19年フィリーズレビュー(ノーワン)で重賞初制覇。22年秋華賞(スタニングローズ)でJRA・G1初制覇。今年のサウジC(フォーエバーヤング)で海外G1初制覇。先週26日京都で3年連続3回目のJRA年間100勝達成。JRA通算成績は5668戦616勝、重賞23勝(うちG1・6勝)。父は大井競馬の元騎手で現調教師の坂井英光師。